第15章 大切な人
「……お前、それ能力で何とかならねえの。どっかに移せ、元々ケーキに入ってたんならそれこそそこに移し替えれば何とかなんだろ」
『で、出来たらとっくにやって……ッひゃ…っぅ……ひ、人の体内に入って効果が出てるってことは、中で成分が変わってる、から…っ』
「!そうか、お前対価交換じゃねえと移し替えられねえのか!!」
声を出すのも辛くてコクリと頷くと、中也さんが冷や汗を垂らしながら再び私の顔を覗き込んだ。
こんな変な状態の顔を見られるのが恥ずかしくて恥ずかしくて、思わず泣きそうになる。
『見ない…で……っ』
「…………お前、対価交換なら出来んだろ…じゃあ俺に移せ、それ」
『!!?…ちゅ、やさんに!?こんなの…っ?』
「俺なら多分まだ幾分かマシだ、お前感じやすすぎんだよ…ほら、とっととしろ。俺は今日はしねえっつったらしねえからな、お前の体調優先だ」
『…つ、らいよ……っ?大丈「いいから移せ、これ以上お前見てっとマジで犯したくなってくっから」…ぁ……は、い…ッ』
中也さんの思いもよらぬ提案に驚きつつも、冷静に考えてみたらどう考えてもこんな状態で行為に及ぶだなんて無謀なこと。
今でだって身体が跳ねる度にギブスの下が痛くなる時があるし、確かに今はしない方がいい。
分かってる。
けどこんな状態じゃ、集中力なんかどうやって…?
『………ッ、ぁ……?……………で、きた…?』
考えている内に無我夢中になって能力が発動したのだろうか、体の火照りも抜けて、疼かなくなってきた。
呼吸を整えようとしている内に中也さんの方はどうなのかと思い出してそちらを見ると、中也さんは目を見開いて私を見る。
「お前…移したか……?俺、驚くくれえに何ともねえんだが…」
『ふえ……っ?で、でも私もう何ともな…い』
「…ちょっと残りの分食ってみるわ」
中也さんがケーキを一切れだけ用意して、すぐにそれを口に含む。
すると何かに気が付いたのか、中也さんが顔を少し顰めた。
「……お前、これ少し薬っぽい風味がすんのに気付かなかったのか?しかも、かなり薄められてんだろこの薬」
『??ぜ、全然わかんなかった…』
「珍しいな、食っても気付かねえなんて…毒なら分かるのにこっちはわからねえ上に弱ぇのか……?」
『………中也さん、なんとも無い?』
「…何ともねぇ」
『……私の弱点?なのかなこれ』