第15章 大切な人
家に帰った頃には夜になっていて、それまでずっと外で色々回っていたため、さしもの私も少しだけ疲れたような気がする。
いや、私よりも私を運んでた中也さんの方が疲れてるはずなんだけどね?うん。
「お前もうバテてんのかよ、体力落ちたか?」
『…片脚使えなかったら何かと不便なんれすー』
「はっ、俺は別に、お前の脚になってても全然疲れなかったけどな?何ならこれから毎日これで行ってやろうか」
『丁重にお断りさせていたらきま………んにゃ…』
「あ?なんだ今の変に気の抜けたような声…は……!?」
ぼうっとする頭で中也さんの方に目を向けると、目を見開いて冷や汗を流し始める中也さん。
なんか可愛い。
『中也さんお水〜』
「……お前、今日外で何食った?」
『あっつい…』
「脱いでんじゃねえよこんなとこで!!?水持ってくっから我慢しろ!!!」
中也さんの叫びを無視して制服を緩め始めると、中也さんが両手でボタンを外し終えたシャツを脱がせないようにと手に持った。
「あ、あの蝶さん…?どこかで何か盛られました?」
『んえ…?何も?』
「んじゃあ酒でも飲んでんのかお前は!?明らかに様子がおかしいだろ!!酒なんかどこで……!?…ち、蝶さんよ……お前確かチェリーパイ食ってたな?」
『美味しかったね〜♪食べたらふわふわしてくるの♪』
「洋酒漬けのデザートにやられてんじゃねえよ…!!!」
ほら、とりあえず水…と渡されたコップを受け取ってそれを飲む。
『…ッん……は…冷たぁ…ありがと中也さん』
「おう、いいぞ。お前が俺の事大好きなのはよォくわかったからとりあえず離れろ」
『ダメ……?中也さんとこいちゃ、蝶悪い子…ッ?』
「だあああっ、違ぇよ可愛いな!!!ケーキ持ってきてやっから酔いが覚めるまでそれ食ってろ!!」
『ケーキ!!?中也さんのケーキ!!!やった!!!』
中也さんがキッチンでケーキを切り分けるのを見ようと能力を使って浮遊して行けば、大人しく待ってろと椅子に座らされた。
何故かと思いつつも言われた通りに待っていれば、中也さんがテーブルに持ってきたのは切り分けられたケーキ……ではなくて、チョコプレートと蝋燭と、様々な装飾の施されたホールケーキだった。
『?ロウソク…?』
「!お前知らねえのか…誕生日の主役はこれを吹き消す権利があふんだぞ」