第15章 大切な人
「……え?礼!?え、白石今礼言ったのお前!?」
「寧ろ日頃からこっちの方がお世話になって…っていうかお世話されてるのにお礼!!?」
「おい待て今の発言どういう事だ、聞き捨てならねえぞ」
中也さんの背中にまた顔を隠して、熱くなった顔を隠す。
「…まあ、こいつの中じゃ予想外だったんだろ、手前らが怒るだなんてこと。今まで友人なんか作ったこともなかったからな……蝶、お前こういう奴らは大事にしとけよ」
『……分かってる』
「ならいい……そんじゃお嬢さん?どこ行きてえよ」
『!まずkunugi-Cafe!!!』
「「「早速かい」」」
ただの十五歳……否、ただの九歳のように何も考えずに即答する。
蝶が生まれてから九回目の誕生日…四年ぶりに、中也さんと一緒にいられる誕生日。
実感なんてこれっぽっちも無いのだけれど、それでも祝ってもらえるのは嬉しいし、時間を割いて私に会いに来てくれたのなんて泣いちゃうくらいに嬉しかった。
『み、皆はもう帰るの??』
「いや?実はな…」
「俺らもこれから磯貝のバイト先に屯いに行くところだったんだよ」
「「「殺せんせーの奢りで!!!」」」
「先生の財布がぁ……!!!」
その声に殺せんせー以外の顔が明るくなる。
男子一同の返答に、女の子たちも声を上げる。
「ええ〜、男子だけずるい!殺せんせー、勿論私達にもあるよね!」
「殺せんせーだもん、生徒には分け隔てなく接してくれるすっごくいい先生なんだから、当たり前でしょ」
「『うわぁ、ドンマイ…』」
「助けて白石さん中原さん!!!」
「あー…なら棒倒しで世話んなったっつー事で野郎共の分なら出してやろうか?」
神を崇めるような目で半泣きになりながら中也さんを見る殺せんせー。
『中也さん、それなら私が出すよ?私の方がお世話になってたわけだしさ』
「お前今日の主役が何言ってんだよ、こいつらの分を出したところでお前と普段食う分の二倍になるくれえじゃねえか」
『それだけ私に払わせないくせによく私より貯金あるよね?ポートマフィア流石すぎる』
「こちとらやろうと思えばいくらでも仕事増やせっしな……ってお前俺より稼いでたくせしてよく言うな。今はどうか知らねえけど」
「「「えっ」」」
『ん〜?私?私は…そうだなあ、中也さんのせいで貯金しかないからなあ』
「了解、それならいい」