第15章 大切な人
「え…い、今殺せんせーの背後を取って……ええ!?何が起きた!!?」
「な、中原さんの異能!!?」
皆のざわつきに私と中也さんはキョトンとして、目を合わせてから私はぷっ、と吹き出す。
『ち、中也さんいつの間にそんな異能持ってたの……っ』
「お前面白がってんじゃねえよ、んな事言ったら信じるだろこいつら。あー…手前ら?勘違いすんなよ、俺は手前らに手貸す時は異能は使ったが…異能なんか使わなくてもマフィアの幹部は務まるんだぜ?」
『中也さんが異能なんて使っちゃったら殺せんせー粉砕どころか液状化して気化するね』
「「「気化!!?」」」
「まあ、今のは普通に人間技だ。俺はこれでも、マフィアの中じゃ『中也さんはポートマフィアで一番の体術使いなんだよ!』…なんでお前が嬉しそうなんだよ」
えへへーと笑ってみせれば反論するかと思いきや、よしよしと頭を撫でられた。
何これ、今日本当中也さん優しいなぁ。
「今のが体術…お、おい標的!お前、避けようとは…?」
「い、いや…無理ですよ、避ける以前に対先生用BB弾で退路を塞がれて…何より中原さんの動きが速すぎて」
「対先生用BB弾!!?」
『あ、中也さん勝手に使った?』
「悪い、借りた。お前なら持ってるだろうと思って」
私の携帯していたBB弾ケースから勝手に抜き取っていたのだろう。
殺せんせーの足元に散らばるBB弾の数は大して多いわけではない。
けれど、この人にとってはそんなものに頼らなくとも、全て等しく殺せてしまう。
『中也さんかっこよかったから許してあげる』
「そりゃどうも…っと、にしても本当速ぇな担任、一瞬思わず異能力使いそうになっちまった」
「か、烏間先生でもここまで出来たことなんて…」
「そりゃ、専門が違うからな。烏間さんはどっちかっていうとやっぱり防衛が専門なわけだし……俺らみたいな殺しの専門とはまた少し方向が別なだけだ。特にポートマフィアなんかやってりゃ、異能力者とかよく分からねえばけもんとかごろごろ相手にしてっからな」
気を使ってくれているのか、お前の事じゃないからなと言うように撫でられながら、中也さんにもう少しだけ強く抱きついた。
「…だが正直、俺は体術でも中原さんに敵うような気がしない……白石さんにもだ」
「!そりゃあお目が高い。こいつは俺の自慢の一番弟子だからな!当然だ♪」