第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
しかし私は、中也さんから血液を取ってしまうことを拒む。
寧ろ、そうならないために…能力をあまり使わないでもいいようにするため、わざわざ己の体術や狙撃術を鍛え直したのだ。
まあ、それでも出血多量が一回と能力の酷使が一回の計二回、中也さんの血液に頼ってしまった事があったのだが。
『お願いします、中也さんの迷惑になりたくないの!…首領!』
目を見て懇願しても、首領は横に首を振る。
「考えてみるんだ蝶ちゃん、君が今から東京に行って帰ってくる…それだけでも二回、移動をするんだ。扉を作る分には、見たところ気力の消耗だけですむようだが、こんなに衰弱した君にはとてもさせられない。」
『でも、私…』
「今は医者として言っているんだ。許可は出来ない…それに、もしもこっちに帰ってくるまでに何かがあって、また防御する事にでもなってみたまえ。そこで倒れれば、それこそ中原君が心配するよ」
『っ……首領、ずるいですよ、そんな風に引き合いに出すの』
「僕だって君の事が大事なんだよ。いいね?中原君呼んできて、すぐに処置をするから。時間かかるし、出来るだけ早く学校に戻れるようにしてあげるから」
よしよし、と頭を撫でて外へ出る首領の背中を見つめて、泣きそうになった。
どうせ今から針を使うんだ、泣いたって多分、怖いからだって思ってもらえる。
今日、決めたばかりだったのに。
貴方の隣に立てるようにって、迷惑にならずに済むようにって。
『結局中也さんの足引っ張ってばっかじゃん、私…』
布団を頭の上まで被せて呟いた。
中也さんは、気付かないでいてくれるだろうか。
私がこんなにも面倒な思考回路を持つ子なんだってことに。
何をどう頑張っても、結局は貴方の迷惑になってしまう、私の力の至らなさに。
こんな未熟で情けない所、貴方には見せたくなかったの。
どうか私の涙の訳に…こんなに小さなわたしの意地に、気が付かないで。
バタバタと忙しい足音が聴こえて、ああ、来ちゃったんだ、と体が強ばる。
ごめんなさい。
「蝶!…待ってろ、すぐに楽にしてやっから!」
駆け付けてきた中也さんの息が上がっているのが分かる。
ごめんなさい。
「点滴を先にするから、中原君は輸血の準備をしていてくれ。」
「はい、急いで戻ってきます!」
ごめんなさい。
首領が私の左腕の消毒を始めた。