第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『そう、ですね…あ、首領。私今日、まだ学校に戻らなくちゃいけないんですけど』
固定砲台の件があるため、出来るだけ早くに学校に戻りたかった。
「ふむ、そうか…でもダメだね、許可出来ない」
『そんなっ、何とか元の調子に戻れれば……』
「言うことが聞けるのなら、話は別だがね?」
首領の顔が笑顔になる。
それはそれは物凄く悪い事を予感させるのには十分なもので。
『…ま、まさか?』
「うん、君がやるんなら、調子を戻せるかもしれないよ?」
どこから取り出したのか、ニッコリとこちらにそれを近寄らせてくる首領。
『それ…っ、どっちも本当にやらなきゃダメですか?せめて中也さんを呼ぶのだけは避けっ』
「蝶ちゃん、やるなら両方ともだ。君は防御壁を張る時に、自分の体の栄養分…そしてそれを含んだ“血液”を少しずつ引換に失っていくからねえ」
そう、両方ともというのは、まず栄養分を体に取り入れるための点滴。
そして失った分の血液を補うための輸血…なのだが。
『は、針使うのまでは我慢しますっ…でもお願いです、私中也さんから血、取りたくないっ』
まず初めに、私は大の注射嫌い。
人体実験の影響……と言いたいところだが、元々注射というものが大の苦手だ。
心を許していない人にされても意地で耐えることが出来るが、本当は内心とても恐ろしくて仕方がない。
「うんうん、我慢するんだね、偉い偉い。…しかし蝶ちゃん、君の気持ちは分からないでもないが、この組織で君の体が受付ける血液は彼しか持っていないんだよ?」
そしてもう一つの問題はここ。
そう、ポートマフィアに保護されてから、当時まだ医者だった森さんに、私の血液を調べてもらった事がある。
傷がすぐに治る不思議な体質。
血液だって、何か不思議な特徴があるかもしれない。
現にそれは、あった。
私の血液を採取して、当時の全てのポートマフィア構成員の血液との反応を見たところ、驚く事に中也さん…彼以外の血液に触れた私の血液は、全て固まってしまったのだ。
勿論首領の血液でも試したそうだが、それでもダメだったらしい。
中也さんとは血液型もぴたりと一致していたらしく、私の輸血のためには、彼の血液が必要不可欠であるということが判明した。
そのため、私の血が足りなくなった時には、必ず中也さんと輸血をするという事になったのだ。