第15章 大切な人
「それで…そんだけじゃ、ねえよな」
『……やっぱり私の見た目は誰がどう見ても変な見た目だし、武装探偵社で働きながら通ってるっていう話は…やっぱり、それも目立つみたいで。親が来てないからって色んな保護者さんの間でも目立っちゃうし、それで、いないから働いてるんだとかなんとかいう人もいるし』
「…他は」
『………見た目がこんなのだったり、能力持ってるのが気持ち悪くて親に捨てられちゃったのか、親に快く思われなくってそれでグレて見た目が奇抜になっちゃったとか…色々。異能ならまだしも私なんか異能力でもなんでもないしさ………言われた事、ぴったり当たってたし…さ……』
寝台に置いた手が震える。
中也さんのせいでもないし、もうどうしようもないことだから、誰にも言わずに留めておこうと思ってた。
だけど、結局考えても考えても、分からないものは分からなかった。
『親の愛情、とか…見てても何にも感じないの。他の子達は分かるのに、これだけ生きてて私にはそういうのが全然分からなくて…でもトウェインさんとか太宰さんとかが来てくれて、来てもらったら嬉しいんだって事だけ理解した』
「!嬉しかった…?」
『ん…何より中也さんのお弁当が嬉しかった。やっぱり中也さんのが…嬉し、くて……ッ…なのにさ、私悪い子だから…っ、なんで自分はこんな能力もって生まれちゃったんだろうとか、なんで親に名前も付けてもらえなかったんだろう、とか……なんで、普通の身体で生まれてこなかったんだろうって…実際は違うけど今日が誕生日って分かってて、余計に…』
気味が悪い、気持ちが悪い、化物みたいな力。
大人からは流石にそんな風に言われはしなかったけれど、やはり中学生の…それも女の子ともなるとそういった事を口にするのが好きなのだろう。
噂話も好きなのだろう。
探偵社、変な髪に変な力、そして…
『……多分、妙に私が落ち着いた態度だったのが気に食わなかったんだと思う。…中学生だもん、カッとなりもす____』
「___お前も、中学生だろ…カッとなれねえくらいに、溜め込んじゃダメだ……それはしちゃいけねえ事だ」
『中也さ…ん……ッ?』
首元に腕を回されて、いつもよりも近い抱擁に包み込まれる。
「お前はまだ十五で……もっと言えば九つだ、間違ったっていい…我慢なんかしなくていい。…遅くなって、本当悪かった……ッ」