第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
呼吸が浅くなる。
久しぶりに横になったポートマフィアの医務室…懐かしい。
芥川さんは、大丈夫だろうか。
きっと首領に任せておけばなんとかなる。
しかしそれが分かっていても、あの傷と出血量を見てしまえば心配にならずにはいられない。
『……折角プリン買ったのになぁ、』
そう、昨日二つ入りのプリンを三つ、探偵社のお土産とは別に買ったのはそのためだった。
私の存在をマフィアに芥川さんが伝えてくれたから。
勿論太宰さんのおかげもあるが、芥川さんが私の事をポートマフィアに伝えていてくれなかったら、きっと今も私は中也さんに会えていない。
それに、なんだかんだ今は立場上対立関係にあたっているが、芥川さんにはよくしてもらっていた。
だから、彼と…恐らく彼と一緒に報告してくれた、あの綺麗な女の人。
あの二人にも、なにかお礼がしたかった。
なのに、渡す前に倒れて意識不明の重体だなんて…
『ずるいですよ、本当』
己の無力さが、無能さが、とことん腹立たしかった。
結局自分の能力の扱いには、こうして限界が付きまとってくるのだというのに。
どれくらいそうしていただろう。
暫く浅い呼吸を繰り返して静かにしていると、首領が私の元へと戻ってきた。
「蝶ちゃん、具合は…」
『首領っ、芥川さんは!?』
首領の言葉を遮ってしまったが、そちらがどうしても気になってしまう。
「芥川君は、一命を取り留めた。後は回復を待つだけだ」
『よ、かった…』
「君が助け出してくれていなかったら危なかったかもしれない。すまなかったね、そして本当に、ありがとう」
手を握って御礼を言う首領。
『そんな、寧ろ私が御礼を言う方なのに』
「そんな事ないさ、こんなに無理して…状況は、後で芥川君の部下から聞くよ。君も体を休めた方がいい」
『体を休めてって…いいんですか。私、もうここの人間じゃないのに』
つい口に出してそう言えば、首領は一度きょとんとこちらを見て、笑いかけてくれた。
「君は、いくつになっても僕の守備範囲内にいるからね。例えどんな境遇にいたとしても大歓迎さ!」
『武装探偵社の社員ですよ?敵対してるんじゃないんですか?』
「敵対は確かにしているねえ。…けど、君は我々の事が大好きだ。そして我々も、君の事が大好きだ。それでいいんじゃないのかい?」
この人は本当に変わらない…。