第15章 大切な人
思い出という単語に私はこれまで、重要性をそこまで見出しては来なかった。
作ってはいけないものだったから。
それが私を苦しめてきたから。
初めから作らないよう努めてきたものだったから。
____ああ、でも中也さんは、私が死ぬにしても死なないにしても最後まで一緒にいてくれるんだっけ。
『中也さんの写真かぁ…』
あの頃はどうだったとか、この歳の時は何をしていたかとか、私にとってはどうでもいいもの。
どうせ無くなるものだった。
どうせ、繰り返すものだった。
「お母さんとかお父さんとかから撮られるとさ、こういう時本当に恥ずかしいんだけど、嫌な気持ちはしないんだよね…なんか、自分のこと好きでいてくれてるんだなあって実感するっていうか」
『……写真撮るのが愛情表現??』
「ちょっと違う気もしないでもないけどそんな感じ?…まあそういうのがあるにしてもないにしても、いつでも中原さんの写真が見られるのは蝶ちゃんも嬉しい事なんじゃない?」
『私なんかが中也さんに写真撮らせてもらってもいいのかな…』
ポロリと漏れた本音にカエデちゃんが目を丸くする。
しまった、言わなくてよかったやつだこれ。
「私なんかって…」
『ご、ごめん、気にしないで……ちょっと今日疲れてるだけだろうから。国木田さんに頭にダメージ加えられたせいかな』
「………写真、撮りたいなって思わない事はないの??」
『へ?か、カエデちゃん?…あ、いや、中也さんの方から撮られたことならあるから!ね!?そんなに「いいから!」うぐ……そ、そんなに言われたら気にならないことも…』
「じゃあ試しに撮ってみようよ!そういえば蝶ちゃんと写真撮る機会もなかったしさ!」
『え…って、ええ!!?い、今カエデちゃんと!?』
カエデちゃんはカメラ機能を作動させて私を引き寄せて携帯の液晶に映し出す。
自分の顔とか映ってるしなにこれ恥ずかしいんだけど!?
「ほらほら、笑って笑って!体育祭記念!!」
『何その記念日!?……ってあああ!!?』
「えっへへ〜♪……おお、可愛い可愛い!後で送っとくね♪」
いつの間にか撮られていた。
絶対変な顔してた。
落ち込んだのと恥ずかしいのと…それから、なんだかよく分からないけど少しすっと心に染み込んできた何か。
『……………嫌、じゃない』
「!でしょ!!」
『う、ん…?』
