第15章 大切な人
いつの日だっただろうか、私が…白石澪が生まれた最初の世界。
あそこにたどり着く前にいた、あそこと隣接していた世界…
生まれは確か日本じゃなかった、それだけは分かっている。
何故かといえば、私が日本語を知ったのは白石澪になってからの話だから。
名前を付けてもらったその時に、初めて日本語を耳に入れたから。
どこの世界においても、意外と日本が存在する世界は多く、結局はかなり役にも立った。
そして意外と学びにおいて苦を感じることのない私の脳も役には立ったし、体だって鍛えられてはいる。
……けれど、結局役に立ったのは澪が生まれてからの事。
親に認めてもらえたことなんて……ううん、違う。
認められるとか、そんな事以前にそういうものとして見てはもらえていなかった。
だけど仕方の無いことではあるのだろう、誰だってこんな奴を見れば君も悪くなるだろうし、殺したくもなるだろう。
白石澪が生まれたのは私が六歳…本当に六歳だった時……とは言えない。
何故なら、その時から…否、それ以前より、この目立つ見た目以外にもおかしなところは沢山あったからだ。
『………学校行事…体育祭……』
今まで過ごしてきた他の世界で、お世話になった人は勿論沢山いた。
けれど、いつも決まって私は私を出せてはいなかった。
理由はごく単純で、私は普通の人ではなかったから。
一緒にいても、一緒に過ごしていなかったから。
…家族や学校、友達……そういうものの概念がなかったから。
平和な世界でとある家族にお世話になったこともあった。
多くの兄妹がいて、例えば学校行事にだって行ったこともある。
暖かい家庭だった、暖かすぎる家庭だった。
だから、いつもついていけなかった。
分からなかった。
子供が笑顔でいるのを喜ぶ親の気持ちにも疎かった。
子供の幸せを親が願うのが、どうして当たり前なのかも分からなかった。
こういう日を自分自身が迎える日が来るなんて思わなくって、まさに今、私の頭の中は困惑している状態なのに。
続々と集まる保護者の姿。
そうか、あれが親なんだ……なんてどこか遠いもののように考える。
そうか、子供は学校に行くものなんだ。
子供が元気に過ごしていれば、嬉しいと思うものなんだ。
子供の姿を見るために、来るものなんだ。
妬む気持ちや羨む気持ちを、全て今の身体の歳のせいにした。
