第15章 大切な人
「ねえねえ蝶ちゃん〜」
「喋んな糞野郎、手前なんでいるんだよここに」
「それはこっちの台詞だよ、まあ君がいることなんて予想の範疇ではあったけれど……で、どうして私というものがありながらこんな蛞蝓がここにいるんだい?」
『予想の範疇じゃなかったんですか?ていうか太宰さん、お仕事は?』
特訓を始めて少し日が経ってから、久しぶりにクレープを食べに行けば、そこでばったりと太宰さんに遭遇した。
相変わらず仲の悪い二人…はまあいいのだけれど、いつ私が太宰さんとそのような深ーい関係になったのかは是非とも私の方が聞きたいものだ。
「仕事なんて無いよ!何故なら私は天才だか『国木田さんに連絡しておきますね、太宰さん見つかりましたよーって』バレてる…!?」
『太宰さんがサボりじゃない方が珍しいじゃないですか。しっかりしてくださいよ』
「いいじゃんいいじゃん、もしもの時は蝶ちゃんがいるし」
『それマフィア時代の話でしょう?もう知りませんよ、私だって自分のお仕事家でやってますし』
「手前うちの蝶に何仕事させようとしてやがんだよ!?つうかそれくらいのこと自分でしろよいい大人が!!」
中也さんの最もすぎる正論に太宰さんは叫び声をあげた。
「な、蛞蝓のくせして…」
『……で、何の用です?わざわざクレープ屋さんにまで来るなんて、私目当てでしょう?』
「!そうそう、蝶ちゃんに用があったんだ!よく分かったね?」
『何年の付き合いだと思ってるんですか…で、内容は?』
太宰さんは腰を屈めて私の耳元に口を寄せ、耳打ちする。
中也さんに聞かれるとまずい話なのだろうかと思いつつ聞いてみると、何やらそうでもなさそうな…しかし確かに大切な内容が伝えられる。
「死神の件なんだけど、イタリアでロヴロさんがやられて瀕死だそうだ。今は病院で療養中らしいが、まだ意識は戻っていないらしい」
殺せんせーから蝶ちゃんに伝えてくれって連絡が入ってね、と言い、太宰さんは私から顔を離す。
ロヴロさんが瀕死状態と聞いてしばらく何も言えなかったのだが、少ししてから太宰さんの方をバッと見る。
『そ、その話…なんで私に……?』
「まあまあ、いいからいいから♪」
何故だか楽しそうな太宰さんに首を傾げていると、太宰さんの企みがすぐに分かったような気がした。
「て、手前…ち、蝶にいったい何を……」
