第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『じゃあ国木田さん、輸送船に近付けるようにするために、私はまず輸送船を丸々壁で覆います』
「輸送船の方をか?しかしそれでは、お前がしんどくなるのでは…」
『ほら、こっちのボートを覆ってしまうと、解除するタイミングを間違えたら中島さんたちを跳ね除けてしまいますから』
確かに、これほどまでに大きな輸送船を防御壁で覆うのにはかなりの気力が必要になる。
しかしそんな事に構っていられるか。
中島さんたちを連れてこのボートに飛び乗って帰りたいのに、ボートに防御壁を張って乗れなかったりしたら意味がない。
念には念を、だ。
それに、私は……
「あ、おい!…ったく、お陰で近づけるようにはなったが、無茶をしてくれる」
国木田さんをおいて輸送船に移動すると、すぐに交戦中の中島さんと芥川さんを見つけた。
女の子…鏡花ちゃんはぐったりとした様子で動かない。
とりあえずは鏡花ちゃんの安全の確保が優先だ。
鏡花ちゃんに防御壁を張って、それから……それから、どうする。
目の前で繰り広げられる壮絶な戦いに、私が入り込むのはいかがなものか。
立場上中島さんを全力で援護しなければならないのだろうが、何よりも私が手を出す隙がない。
それ程までに力強く、激しい戦い。
「う…、」
『!目、覚めた?初めましてだよね、私は武装探偵社の白石 蝶っていうの。鏡花ちゃんを助けに来ました』
「白石 蝶…聞いた事、ある」
聞いた事…そうか、中々ポートマフィアでも目立ってた方だろうしなぁ。
なんて思ってた私は次の発言に腰を抜かすことになる。
「あ、プリンの人」
突然の一言。
プリンの人??
『へ、プリン?…あ、お土産!食べてくれたんだ、良かった!あ、動かないでね、怪我してるし。多分中島さんは大丈夫だから、終わったら一緒に連れて帰ろ?』
「芥川と、張り合ってる?」
『うん、中島さん、強いよ』
中島さん、入社してから異能も使いこなせるようになってるし。
何よりも、食らいつこうって頑張ってる。
私が心配なのは、寧ろ芥川さんの方…
「人は、誰かに生きていていいよと言われなくちゃ生きていけないんだ。そんな簡単な事が、どうして分からないんだ!!」
胸に強く響いた、中島さんの言葉。
それから少しして、戦闘は止み、中島さんも芥川さんも地面に倒れた。
____中島さんが、勝った。