第15章 大切な人
翌日。
結局、私も中也さんも二人して色々な意味で浅野君に火をつけられてしまい、夜通しで作業や考え事に勤しんでいた。
まあ途中で寝かされはしたのだけれど、今回は賭けの内容が内容だ。
出来上がった作戦をまとめて学校に持っていけば、教室の中では早速磯貝君の周りに輪ができている……うん、いい雰囲気だ。
「磯貝の分は俺らがなんとか頑張るとして…にしても白石がそんなに啖呵切るとはな。今回のイケメンの座は白石じゃねえの?磯貝!」
「あいつ、よく考えてみりゃあれで結構好戦的だしな。しかも今回はあいつ自身のクラスの移動までかかってんだろ?」
「つうかそれで賭けに応じたあたりが白石らしいっちゃらしいが…正直どうすりゃ勝てるかなんか全っ然思いつかねえんだよなぁ……体育祭での棒倒し」
はあ、とため息のこぼれる教室。
なんともまあ情けないため息だ、気合があれば皆ならもうなんとか出来るだけの力はあるはずなのに。
浅野君の出してきた賭けとはシンプルなもので、体育祭で行われる男子限定競技の棒倒しに勝利すること。
あの顔じゃあ他にもまだ何か企んでいそうな気はするし、ある程度のところまでは想定して作戦を練らなければならない。
更に、元々E組とA組とでは男子の人数差が大きい。
皆が気を落とすのも無理はないだろう。
『ふぅん?じゃあ磯貝君は退学になって、私も皆とバイバイかな?』
「そんな事させるわけねえだろ!?磯貝も白石もいねえE組なんか……って、あれ?」
「第一磯貝も白石も、別になんにも悪くはな……!?」
皆に向かってん?と小首を傾げれば、一瞬で男子全員から焦ったようにして後ろに下がられた。
「し、しし白石!!?お前っ、なんでこんな時間に!!?」
今はまだ朝早い時間。
男子達には磯貝君から棒倒しの話をするべく集まってもらっていた。
その事はまあ簡単に予測が出来ていたため、私もそれに合わせて少し早めに登校したというわけだ。
「ち、蝶ちゃん…昨日は本当にごめん。蝶ちゃんまで巻き込むことになるなん『なんでそんなに弱気なのよ磯貝君まで。リーダーが下向いてちゃダメじゃない』!…リーダー?」
『皆からの人徳って、リーダーには一番大切な事よ。磯貝君には皆ついてる…一人じゃない。……ほら、何朝からそんなにどんよりしてるのよ?折角作戦案考えてきたっていうのにさ?』
「「「作戦案!?」」」
