第15章 大切な人
「お前はいったいなんの挨拶を学んでんだよ。つうか無用心すぎな、お前絶対ぇナンパされてんのに気付いてねえだろ」
『え、ナンパ?キスじゃなくって?』
「……よお、榊原とかいったか?手前、するならよぉく人を選べよ?誰の女に手ぇ出そうとしやがったか分かってんのか?」
『あれ、中也さん?無視は酷いんじゃ…』
「…貴方は?何度か本校舎でお見かけしたことはあるのですが」
中也さんに向かってようやく声を発したのは浅野君。
ああ、そっか、浅野君とは会ったことあるんだっけ。
「手前は…浅野さんとこの餓鬼か。悪いが俺は浅野さんには世話んなってるが、息子にまでそれで対応を変えようとは思わねえ人間でな。とりあえずこのナンパ野郎を大人しく……あ?」
中也さんが手を離すと、そのまま動かずピクピクと気を失っている様子の榊原君。
あーあ、普通の中学生相手に中也さんが圧加えちゃダメだって、中也さんが。
「すみません、うちの者が……白石さんもすまないな。見たところ、そちらの方は白石さんの…恋人さん?」
『へぁ!?そ、そんな…こ、恋人さん……あ、そ、そっか!恋人さん…』
「え、何お前、違うとか言わねえよな今更。俺今かなり怖いんですが」
『い、いや…なんか中也さんって恋人……とかいうよりはもっと深いっていうか…もっと大事っていうか、一言で言い表せないっていうか……』
「「「「深い関係!!?」」」」
『へ?』
思った通りの事を述べたのだけれど、物凄い勢いで驚かれた。
「………うちの蝶がすまねえ、確かにそういう関係ではあるが、俺は元々こいつの育ての親みてえなもんだ。後はまあ、色々助けたり助けられたり…ああ、確かに深ぇなこりゃ」
『ね、深いよね?なんで謝ったの中也さん、私何も変な事言ってないのに』
「悪い、俺の感覚が鈍ってただけだな。とりあえずこっち来い、そこでのびてるそいつ以外の輩に襲われる前に」
『私の方が強いから大丈夫だと「だからそういう意味じゃ…もういい、諦める。……来ねえのかよ」!行く♪』
中也さんの方の席に回って、隣に座って思いっきり抱き着いた。
中也さんの方から来てなんて言われたら行く以外に選択出来ないし、甘えない手はないよね。
ただでさえ今日なんていっぱいくっついておきたいんだもの。
「し、白石さんが彼氏持ち…それも歳上……」
「慣れろ…慣れるんだ」
