第15章 大切な人
『今絶対誤魔化そうとしてるでしょ』
パフェ美味しいけど。
「いやいや、目の前でそんな事言われちゃあなあ?誰だ蝶に向かって手前だなんて呼んでた野郎は、身の程知らずにも程があるな」
「「「「無かったことにする気だこの人」」」」
まあ中也さんの状況が状況だし、今回の分はノーカウントにしてあげよう。
パフェ美味しいし。
『今回はパフェの美味しさに免じて許してあげる。磯貝君に感謝だね』
「え、俺?」
「ナイスだ、イケメンだな手前」
「ほ、褒められてる気がしないんですが…」
若干苦笑いになりつつも美味しいならよかった、と爽やかな笑みを見せる磯貝君。
が、そんなところで予測もしていなかった事態に直面した。
「おや?」
「おやおや、これは…E組の委員長の磯貝く「白石蝶さん!!?」…気持ちは分かるが店の中であまり騒ぐんじゃない」
『あ、浅野君…?……と、どちら様?』
店の中に突然現れた浅野君…そして謎の男子四人組。
それぞれ何やら特徴的な髪型をしていてツッコミどころは満載なのだけれど、気付かなかったことにしよう。
「お、覚えられてすらいない…だと……」
「麗しの白石蝶さん!!ああっ、貴女様にお会い出来る日をどれほど心待ちにしていたことか…っ、僕の名前は榊原 蓮です」
以前より貴女様の事は存じておりました
なんて言いながら優しそうな顔をして、なんの前触れもなく私の手を取られる。
『ひゃ、…っ?』
椅子に座る私の目の前で傅くように膝をつき、そして私の手の甲に口付けを落とそうとしてか口を近づけたその時。
「お近付きのしるしにキ「おい、手前」…ッ、が……っ!!?」
「馬鹿かよ榊原の奴、ナンパするなら相手選べって」
「何より今あの人のいる目の前で蝶ちゃんに手出すとか死刑ものだよね、逆に尊敬する」
「白石にだけは手ぇ出しちゃいけねえってなんで分かんねえのかな、あのサイト見てるだろうに」
珍しく意気投合した様子の岡島君と片岡ちゃん。
あのサイトって、まさかこの二人知ってるの?
ってそうじゃなかった。
このままじゃ危ない、榊原君とやらが。
私の向かいの席に座っていたかっこいいかっこいい中也さんの手が、見事に榊原君の頭を鷲掴みにしてミシミシいわせてます。
はい、かっこいいです。
じゃなくって。
『ち、中也さん?あの…あ、挨拶だと思う……よ?』
