第15章 大切な人
少なかった残りの授業を終え、放課後となる。
椚ヶ丘の方で行く場所と言えば、まあ一箇所しかないわけで…
「到着…!お久しぶりのkunugi-Cafe!!」
『カエデちゃん、今日元々ここに来るつもりだったでしょ』
「バレてるね完全に。磯貝君のところだし、丁度今日一緒に行きたいねって話してたんだ」
カエデちゃんと渚君、そして片岡ちゃんと岡島君も一緒に磯貝君のバイト先に足を運んだ。
中ではせっせと磯貝君が働いていて、持ち前の爽やかさとイケメンオーラはさることながら、お客のマダム達や店からも厚い信頼があるように伺える。
「…で、お前はなんでわざわざ俺の席に?」
『……嫌?』
「いや?すげえ可愛い」
『も、もうそういうのいいですから!!』
「お前他の奴らがいたら恥ずかしがっちまうだろうが?せっかく今二人なんだから、可愛がってやらねえとご立腹だった蝶がまたいじけちまうだろ」
「「「「いや、隣の席にその他の奴らがいるんですけど」」」」
中也さんの発言や目線に盛大に照れさせられて、他の人達に気にせずにフイ、と横を向く。
『べ、別に怒ってない…し……』
「じゃあ寂しがってたか…やっぱり妬いてたかだろ」
『………両方』
「え、何お前なんでこのタイミングで素直蝶さん出てくんの」
『…だって久しぶりの中也さんなのに、来ないでって言っても学校着いてきちゃうし他の子といっぱい喋ってるし、他の子にばっか…!ご、ごめんなさい別に不満があったわけじゃなくって!!』
ガタッと音を立ててその場で立ち上がった。
久しぶりだなんて、なんて酷いことを口にするんだ私は。
なんて薄情な事を言ってしまうんだ。
「気にすんな、実際俺も久しぶりみてえな感覚だ。…待たせちまった上に酷ぇ事もしちまったしな」
頭にポン、と手を乗せられて、そのまま椅子に腰を下ろす。
酷い事?何か私がこの人から酷い事なんてされたかしら?
『中也さんが…?どっちかっていうと私が…というか私の方が原因で「もう言うなそれは、お前のせいじゃねえんだ」…』
「それに、普通なら俺はとっくに死んでてもおかしくない状態だったはずだ。……無茶させちまったんだろ、じゃなけりゃ今頃こうして生きちゃいねえ。…辛い思いばかりさせて、本当に悪かった」
『………お相子、です。…思い出しても、中也さんに離れられなくて良かった』
