第15章 大切な人
『あ、甘えてない!!』
「蝶〜、そんなムキになってちゃ鈍感な中也さんでも流石に分かっちゃうって。独り占めしたいんなら素直にそう言っちゃいなよ」
『な……ッ!?』
「ほうほう、蝶ちゃんもやっぱ乙女やねえ。中原さん絡んだらいつでも女の子になってまうから可愛いわぁ」
『違…っ、ち、中也さんが他の子ばっかりと喋って…じゃなくて…!わ、私の…じゃなく、て……』
言葉にしきれなくて、悔しくて、情けなくて恥ずかしくて、ポロッと雫がこぼれ落ちた。
「!蝶?…中也さん、蝶に昨日と今日と何かしたの?」
「泣かせるような事は……って蝶、目擦るんじゃねえよ、腫れんだろうが」
『え…あ……っ…な、なんで中也さんが……』
「……ここはあれだね蝶ちゃん!久しぶりに放課後デートしよっか!!」
『!…へ…?』
「「「は?」」」
突然響いたカエデちゃんの声。
それにピタリと何かが鎮まって、顔を向ける。
「で、デートって…え、待て蝶、早まるんじゃ「中原さんも同行でいいですから!」そ、それなら…じゃなくてだな」
「蝶ちゃんどこか行きたいところない?ここ最近元気無かったし、時間あるならどこか行こうよ!」
『あ…いや、でも私……』
チラリと中也さんの顔を伺うように見ると、中也さんが眉根を寄せて不機嫌そうな顔になる。
「……お前俺に遠慮とかするんじゃねえぞ、そもそも元気無かったってのも俺が原因みてえなもんなんだ…晩飯大量に食わされたくなけりゃ夕方のうちに大量に甘いもんでも食っとけ」
『え…?……ああ、甘い物…』
「?…!お前、前におばさんとこのやつ食った時は大丈夫だったか?」
『う、うん。あれはちゃんと美味しかった…』
「なら大丈夫そう、か…?お前が甘いもんに反応しねえと思ったら…」
味がするか、分からない。
多分大丈夫だとは思うのだけれど、甘い物でも味がしなければ甘くはない。
自分の舌が今おかしいって分かってる、分かってるからこそ…何かを食べるのが少し怖い。
『………ち、中也さんが来るなら…他の子にデレデレしないでよ』
「俺がいつ誰かにんなことしたんだよ!?…今日は、夜は俺が作ってやろうか?」
『!!い、いいの?中也さんのご飯??』
「おう、いいぞ。たらふく食わせてやる」
『…じゃ、じゃあ……うん、食べる』
「……任せとけ、美味いって思わせてやるよ」
