第15章 大切な人
『ち、中也さん…な、何……?』
「おい、中也さんとやら。蝶は俺に用があるんじゃないのか?それなら離し……!?」
イトナ君の頭を手で鷲掴んでグググ、と力を込める中也さん。
て、手が本気だ…え、何この人本当に私の時は手加減してただけなの、ねえ。
「おい餓鬼、言葉遣いがなってねえんじゃねえのか?ああ?……あと蝶は手前なんざに用はねえんだよ、分かったらとりあえずこいつに近寄んな」
『え、あの…中也さん?』
「中坊相手に餓鬼とか、馬鹿なのかあんた……っ?それを言う、なら…蝶だって「手前それ以上言うな、まだ続けるなら本気で潰すぞこの頭」…」
『ち、ちょっと中也さん!なんでそんな怒って…』
「……気にしてねえならいい。悪かったな、大人気ねぇ事して」
あっさりとイトナ君から手を離した中也さんは、私からも手を離してしまう。
それになんだかム、と顔を顰めて中也さんの方に背伸びをして顔を寄せた。
『…中也さん?なんで私まで離すの?』
「あ?お前がイトナに用があるんじゃ『へえ、離しちゃうんだ?じゃあ私、好きなように動いちゃっていいんだ?』…好きになようにすればいいだろ」
中也さんの目をジトリと見続けていれば、遂に観念したのかハア、とため息を吐いて中也さんは腰を屈めて私と目線を合わせた。
「ったく…束縛されんのが好きとか何なんだよお前、今回ばかりは特別だから仕方なく折れ『今回は??』……五日間じゃなかったっすか蝶さん?」
『五日経ったら蝶の事また離すの?蝶よりイトナ君の頭の方が触ってる時間長かったよ』
「お前昼間あんだけ撫でられといて…!!てかお前、なんでそこでイトナに妬いてんだよ!!?」
「「「え、妬いてんのこれ」」」
「お、俺…?」
腕を組んであたかも怒っているというような態度をとり、頬を少し膨らませる。
『私が撫でられてない時に他の人に触れるのなんか複雑』
「男だぞ相手!?男!!!」
『それが何よ!中也さんは私のなの!!』
「お前怒るか悶えさせるかどっちかにしてくれねえか!?リアクションに困るから!!」
「「「何この夫婦喧嘩」」」
ああ、だめだ。
この感覚が久しぶりすぎて、ただのわがままな子になっちゃうじゃない。
『…っ、困ればいいのよ中也さんなんて!!私で困って頭いっぱいになっちゃえばいいの!!!』
「甘えんの下手かお前!?」
