第15章 大切な人
私の方が何倍も歳上なはずなのに。
なんであんなに敵わないって思っちゃうんだろう。
なんで、あんなにあの人は私よりも大人っぽいんだろう。
「中也さんが大人っぽいって…そりゃあ蝶より何歳か歳上だし、そうなるんじゃない?」
『!違ッ…!!じゃなくて、そうじゃなくて、!……っ、し、心臓もたない気がする』
「うん、なんやかんやあって逃げてきたんだね、そこだけはよく伝わったよ」
『………最近の分だけ、記憶…戻したの。そ、そしたら……なんか、なんか…』
「戻した?って…!とりあえず教室向かおう?授業もうちょっとで終わるし」
そうか、もうすぐ授業が終わるんならキリがいい……ん?ちょっと待ってよ。
目の前のカルマの顔を見て、そろそろ違和感があるわけでもないのだけれどもどういう事かをすぐに悟った。
さ、サボりだ…!!
『……ちなみに今の授業は?』
「ん?国語♪」
『国語で教室いないとか珍しいじゃないカルマ君?』
「…烏間先生が、そろそろ来るんじゃないかって言ってたから。詳しい事情も俺は聞いてたし、とりあえずちゃんと来れるか様子だけ見てきてくれって」
カルマの言葉に目を見開いた。
え、それって烏間先生が言ってたってこと?
私の事気にかけて…?
『か、烏間先生が?』
「そ。後殺せんせーも…ちゃんと無事そうだし、中也さんの記憶も少し戻ったんなら良かったのかな?蝶もなんか嬉しそうだし……前みたいにちょっと戻った気がする」
『!そ、っか……烏間先生にまで心配かけてたんだ』
「クラスの奴らも皆心配してたよ。一応探偵社の依頼だって話で通ってるけど、最近蝶にあんまり元気なかったのは皆気付いてるから」
そんなに分かりやすかったのか、私。
痛みも引いてきてゆっくりと立ち上がり、そのまま歩を進める。
校舎の窓からは授業の様子が伺え、なんだかようやく一段落したような、いつもの生活に戻ってきたような、そんな気分。
横浜に帰れば中也さんがいる。
私の大好きな…私との時間を過ごしてきた中也さんがいる。
今日は帰ったらいっぱいいっぱい甘えよう。
中也さんのいる家に帰ろう。
いっぱいいっぱい、まだ思い出していない小さな頃の分までいっぱい…
『……えへへ』
「あ、その顔久しぶりに見た。惚気るつもりかな」
『ううん〜…えへへ〜…』
緩んだ顔は暫く元に戻らなかった。
