第15章 大切な人
朝から…というよりは昼から、ルンルン気分で学校だ。
ここはちゃんと電車に乗って、久しぶりにしつこいくらいの親バカ中也さんを振り切って、無理矢理椚ヶ丘に到着。
そこから颯爽と道を駆け抜け、木々を渡り、山の頂上までかけ登る。
そう、まるで疾風の如____
「あ、おはよう蝶。あれから中也さんとはどうなったの?」
『!!?…ッきゃあああ!!?』
「え゛っ!?」
思わずドサドサッと音を立てて、木から真下に落下した。
受け身をぎりぎり変な体勢でとりはしたものの、痛いものは痛い。
うわ、完全に打ち身だこれ、最悪…
なんて考えが過ぎるとともに、記憶が少し戻ったからか隠していただけだったのか、大人っぽくて色っぽい中也さんの表情が頭に思い浮かぶ。
『……!!!?誰よ今中也さんとか言ったの!!?』
「俺しかいないって事にいい加減気付こうね、蝶?」
『へあ!?…ってなんだ、カルマか』
「なんだって何」
『う、ううんなんでも……?うん、やっぱりカルマって言うには別に抵抗無いんだよなぁ…』
ぽつりと呟いてから、カルマに差し出された手を掴んで立ち上がる。
のだが、打った上に元から別の意味で痛めていた腰が悲鳴を上げ、思わずその場で蹲るように座り込んだ。
ちょっとマシだったのになんでこんな痛くなるのよ。
「すっごい高さから落ちたもんね…打ち身って治り遅いんでしょ?俺が運んで…」
『い、いい……です。あ、歩けるから』
痛みを覚悟していればの話。
そうそう、今のはいきなりで痛かっただけだ。
また気分を切り替えて考えないようにすれば…
____お嬢さん?
『きゃぅ…ッ!!』
「!?ちょっ…なんでいきなりショートしてんの!?中也さんに何されたわけ!!?」
肩をゆるく揺さぶられるものの、顔が熱すぎて煙を吹いてるこの状況。
完全に中也さん耐性が薄くなったなこれ…よくもまあ自分からキスなんて……ああああああなにやってたんだ私はああ!!!!!
『………ねえカルマ、私今日あたり中也さんに照れ殺されるかもしれない』
「いや、本当に何されたのそれ」
『何……って…ッ!!ち、中也さんがいきなり女の子扱いばっかりしてくるから!!!』
「いつもしてたと思うの俺だけかな?」
『い、いつもよりもっとなんか違うの!!な、なんか…なんか、中也さんが大人っぽいの!!!』