第15章 大切な人
『覚、えてる…?』
「……覚えてる。指輪の事も、チョーカーの事も…澪の事も、寿命の事も」
『!…他には?』
「…探偵社の新人のくせにマフィアの手伝いばっかりしてるお節介な奴で、それでも国家機密級の任務までこなしていて……俺の事が好きすぎて仕方ねえ奴」
『!!?そ、そんな情報いらな「んで…」ッ!!』
中也さんの声が耳元で響いて、それにまたビクリと反応する。
少し低くて、ちょっとだけ大人っぽい中也さんの声。
「……俺が、好きで好きで堪らねえ唯一の女」
『へ…ッ、え、と……っ…ちゅ、うやさ…ッ?』
「なんだよ…文句あるか」
『な…無い………けど、いきなりなんで…』
「…我慢させてた分素直に言ってやってんだろが、気付けそんくらい。……で、俺はあらかた思い出したような感覚になってるんだが…まだ俺に思い出させねえようにしてる事、あるな?」
中也さんに見事に言い当てられてギクリとする。
そうだよ、中也さんと出会ってからまた攫われるまでの期間のものは出来るだけ思い出させないようにしてあるし……今中也さんに知られたら、“気付かれてしまう”ことだって出てくる可能性が大いにある。
『………中也さんが嫌いなわけじゃないの』
「!…分かってる。お前は変に優しくてすっげえ怖がりな奴だから、まだ言い難いだけだろ?……自力で思い出してみせるさ」
『…ん』
出来ればそのまま、何にも気付かないよう深くは思い出さないで下さい。
勿論全部思い出してはほしいけど…だけど、そこだけには気が付かないで。
せっかく今まで、なんとか気付かれないようにって徹してきたところなんだから。
中也さんにだけは、知られちゃいけないところなんだから。
「……んで、お前いつの間にカルマの事そう呼び始めたんだよ?俺は未だに中也“さん”なんだが」
『!ち、中也さんは中也さんだか「他の奴には呼び捨てしてんのに?」な、なんで今日そんなに妬いて…!!』
「もう言っちまった後だからな。俺、めんどくせぇくらいに嫉妬深い男だって」
『!!!……あ、の…中也さん?……もしかして根に持ってます?』
「あ?別に俺は根に持っちゃいねえぞ?お前が俺以外の奴になら呼び捨てにしてる事だとか、立原の野郎に目の前で大好きだとかほざきやがったとか…」
やばい、完全に根に持ってるよこの人。
こんな中也さん知らない…