第14章 わからない人
蝶から聞かされたのは能力の話。
蝶の持つ能力は先天的なものな上、どうやら異能の類とはまた少し違ったものであるらしいこと。
そしてその能力の具体的な話…それから、体質の話。
『私の体は傷が出来たらすぐに治っちゃう…っていうのはもう知ってると思うんだけど、もう一つ変な体質があって』
体質というかなんというか、と口を吃らせる蝶。
本人が渋るその内容は、相当なコンプレックスなのだろう。
やけに自分をほかの奴らと比べて卑下しているような素振りを見せてもいたし、この様子を目にするだけでも本当に人には言いたくない事なのだろうと簡単に察しがつく。
それなら言わなくてもいいと言いそうにもなるが、恐らくこいつは覚悟を決めれば強情な奴だ…俺に言うと決めたのならば言うのだろう。
言いたいのだろう…内心では全て伝えて、全て知ってほしいのだろう。
子供じゃねえっつったって、人間、誰しも大人になんかなれねえ部分はいっぱいある。
相手が唯一と言っていいほどに甘える事が出来ていたという俺だからこそのこの反応なのだ…そんな俺が忘れちまっているから、これだけこいつは怯えているんだ。
「…俺に気は遣うなよ。言いたきゃ言っちまえばいい…俺はお前の事を知りてえし、お前が俺に知ってほしいっつうんなら俺は真正面からお前をちゃんと理解する」
『……わ、私…ね……?』
「…おう、怖がらねえでいいぞ。ちゃんといるから」
『ん…私…』
____死ねないの__
少女の口から紡がれた言葉に、その瞬間、頭の中が真っ白になった。
…死ねない……ってどういう事だ?
「それはいったいどういう…」
『…今まで何回も死んだことはある。自分で死んできたことも…でも結局、死んだところでまた生き返っちゃうの、私』
「生き返る…?」
『………他殺でも自殺でも、死んで心臓が止まったら、私はまた子供の姿になってすぐに肉体が再生するし…すぐにまた意識が戻ってくる』
そんなことが有り得るのか。
開きかけた口にグッ、と力を入れ、少女の目を見つめる。
相変わらず逸らされたままではあるのだが、俺の反応を待っている…怖くねえって自分に言い聞かせるようにして、怖ぇのを我慢してちゃんと待ってる。
「……よく言ってくれた。ありがとう…今はこれしか言ってやれねえけど、教えてくれてありがとな」
今の俺の素直な気持ちだった。
