第14章 わからない人
『…ここまで聞いたのに、離れないの?気持ち悪くないの……?』
「気持ち悪くなんかねえよ、少し話のスケールがでか過ぎてっつうのもあるかもしれねえが……それでも俺の中では、お前のその話を聞いて腑に落ちるところも多かったしな」
子供の割には妙に大人びた性格…しかし大人のそれとは違う、まだまだあどけない未熟な雰囲気。
人に甘えるのも下手くそで、子供にも大人にもなりきれねえような、そんな奴。
きっとこいつはそんな奴だと、本能的にどこかで悟った。
先程蝶の口にしていた自殺というものは、自暴自棄になった時期があったということだろう。
これほどまでに純粋そうな奴ならば、自棄になったというよりはただただ死にたくなってただけか…まあどちらでもいい。
太宰の野郎や首領から聞いた寿命の話…それに怯えるこいつの心境も、それならかなり納得がいく。
今までに死ぬ事が出来ずにここまで生きてきて、ようやく以前の俺と出逢えて幸せに過ごしていたのだというのなら………その反動は大きなものであるはずだ。
そんな中で寿命なんてもんが問題になって、俺がこんな状態じゃあ不安にもなる…自棄にもなる。
昨日俺が思わず手を出してしまった時の蝶の様子にも納得だ。
「……お前のその体質、お前からしてみたら厄介なもんだったんだろうが…それでも俺は今、お前のその体質に感謝しているところもある」
『…なんで』
どれ位の間生きているのか、その問いに返ってきた返事は数百年といったような単位のもの。
それなら尚更感謝じゃねえか。
素直にそう思う…そして恐らくこの感じじゃあ、以前の俺でもそう思っていたはず。
「俺はお前と出逢えてなけりゃ、今こんな風に俺の事を想ってくれるような奴と出逢えちゃいねえだろうし…もっとろくでもねえ奴になっていただろうとも思う。お前と出逢えたのは紛れもなくその体質のおかげだろうし、おれはそれも含めてますますお前を手放したくはなくなった」
『…………な、んで…?』
「…くせぇ言い方にはなるが、運命としか思えねえだろこんなの?みすみす逃してたまるかよ、これまで我慢してきた分、全部俺にぶつけちまえばいい…俺が今我慢させてる分も、全部ぶつけてくれればいい」
蝶の方からようやくすすり泣くような声が聞こえて、腕の中を覗けば酷ぇ顔をして小さく泣きじゃくっていた。
俺は泣かせる事しか出来ねえのか
