第14章 わからない人
「それくらいならいけそうか?」
『…入らないこともない』
「よし、んじゃ後これだけな」
よしよしと頭を撫でられ、少しだけ頬に熱が集まるのを感じてから俯いた。
すると中也さんの手が止まって、どうしたのかと動揺し始める。
「いきなり俯いて……って!わ、悪いいきなり撫でたりなんかして!!」
『!……やめるの?』
「!!?」
パッと離された手に振り向いて、口には出せないやめないでという言葉が漏れそうになる。
どうしよう、迷惑しかかけてない。
ちょっと恥ずかしかっただけなの、ちょっと嬉しかっただけなの…そんなところでやめられちゃうと、すっごく切なくなっちゃうの。
「え、ええっと…?」
『……ごめんなさい、なんでもないです…………ッ!』
顔を背けて正面を向いたら、少ししてからまた大好きな手の感触が伝わった。
「謝んなって、悪いことしたわけじゃねえんだから……ほら、あともうちょっとな。食えそうか?」
『……っ、………ぃ』
「なんだ?なんでも言ってみろ、怒ったりしねえから」
『…た、食べさせて欲しい……で、す…』
「なあ、お前俺の事実はすっげえ嫌いだろ。悶え殺しにかかってきてやがるなおい」
中也さんのよく分からない発現は無視してまだ?と言ったように目を向けると、少し懐かしい反応で中也さんはああもう!!とヤケになったように折れてくれた。
クスクスと笑う紅葉さんや広津さんの声が聞こえる。
箸に少なめに料理を摘んで私の方に向け、顔を真っ赤にしてそのまま止まる。
「な、なんだよ、お前が言ったんだからな!?変だとか柄じゃねえとか思っても仕方が……っ!!?」
一向に差し出されなかった中也さんのお箸に、今日は自分からパク、と食いついた。
飼い猫みたいでもなんでもいい、これが好きで仕方ないんだもの。
『………美味し…っ!?ん、むッ…!!』
口を離して飲み込んだら、落ち着くまもなく次の料理が口の中に突っ込まれた。
何事かと思って目を開くと、中也さんの真っ赤になった…しかしどこか焦りを抑えたような変な顔。
「そうかそうか、そんなに俺に悪戯してえかお前は。たんと食わせてやるから覚悟しとけ、いらねえっつっても食わせっからなこの野郎」
『ま、待っ…!!こんなに無……っ、りだから…!!』
「普段食ってたんだろ、食え。つか食わせる」
『鬼……っ!!』