第14章 わからない人
『い、いやどう考えたらそんな考えに行き着くんですか!?私は貴方がお酒を飲むと対処するのが大変になるからと思って』
「嘘を吐くな蝶、先程皆の前で認めたばかりではないか」
『……人の中也さんに手出しかけた人がよく言う…』
「関係ないなどと言われてしまえばやめる必要もないかと思ってのう?まあ、私相手でも無ければあの場で八つ裂きにされていたかもしれんな!良いか?ここにいる全員、中也にだけは手を出さぬ方が身のためじゃぞ。出したら蝶に殺されるゆえ」
どの口が言ってるんだ酔っ払い…!!!
心の中で全員が突っ込んだ。
はずだ。
「人の俺だとか言っておきながら俺のもんにはなってくれねえのな?ほら、食えよ」
『…言ってませんそんな事』
「はいはい、分かったから。食わねえの?お前用のやつ作りすぎてメニューがかなり豊富になってんだが」
『い、いらない…そんな食べれないし』
「無理矢理にでも食わしてやっから早く座れって、ここらの料理にだけは手付けねえように言ってたんだぞ」
出たよ世話焼き中也さん、お節介、鬼。
頼んでないのにこんな事ばかりするあたり、今更ながらに紅葉さんに似ているじゃないか。
チラリと目を向けるとまだ美味しそうなにおいを放出し続ける、いかにも美味しそうなメニューがずらり。
なんで一人に対してこんなに作ってんのこの人、ていうかいらないってはっきり断ってきたよね私?
中也さんとかあれだけ言えば暫くショック受けて立ち直れなくなってたよね?
誰の入れ知恵よ。
「ここでいいだろ、ほら座れよ」
『い、いい…』
「…俺にこの場で公開ディープされんのと飯食うのとどっちがいい?」
「「「!!!?」」」
唐突すぎるその選択肢に全員が中也さんの方を振り向いた。
さっきまであれだけしないしないと言ってた人が突然すぎる変わり身を果たしたらこうもなる。
『………どっちがいいと思ってるんです?』
「あ?そりゃ飯食う方がいいだろお前にとって。じゃねえとこの場でお前……っ?」
ジ、と中也さんの方を少し見上げたまま目を見つめた。
馬鹿なのかこの人は、自分で自分の首をしめるだなんて。
そんな選択肢、私ならどう考えたって選ぶのはそっちの方なのに。
『…自分で選択肢に出しておいて実行はしないんですね?』
「!!…っ、変更だ変更!!!食い終わったらだ!!!!」