第14章 わからない人
中也さんの声に私が間抜けな声を出した。
周りを見ても、誰一人としてそれをなんとかした方がいいという人はいない。
皆、どうしてそれを治す必要があるのか疑問に思っている顔だ。
『な、んでって…わ、私の体質が移ったら大変で……』
「いいじゃねえか、毒の抗体があったおかげでこうやって今生きてんだから」
『そんな単純な話じゃなくて!!!』
「それに俺がお前と同じ体質とやらになれば、ちょっとは理解してやれるだろ」
中也さんのこの声には、私含める他の全員が目を見開いた。
『な、に言って…?』
「お前は相当そこがネックだったみてえだからな。そんなに嫌な体質持ってるってんなら、全部俺に背負わせちまえばいい……移せるんだろ?お前なら」
『!!…背負うとかいいです、から』
「なら半分にでも分けちまえばいいじゃねえか。現に俺はお前のお陰で生きてっし…記憶があったとしても多分、俺は同じ事を思ってる」
その通り、本人というのは流石である。
そうだよ、同じ事言って、それで一緒にいてくれだなんて。
普通の感覚で言えるようなものじゃない。
私の体質なんか、詳しく知らない立原と紅葉さん以外の人でも驚いてる。
『……何でそんなこと言えるんですか?普通、得体も知れないそんなもの欲しがったりしないでしょう?』
「悪いが俺は、どうもお前相手だと普通の感覚を忘れちまうらしいんだ。お前が苦しんでるものならなんでも奪い取ってやりてえみてえなんだよ」
『…何それ、口説いてるんです?』
「振られたばかりだが口説いてるなこれは。口説くつもり満々だ」
堂々とした言いっぷりにフリーズする。
やっぱりこの人は意味が分からない、よくこれで今まで生きてこられたなこの人。
本当に、頭がおかしいと思う。
『紅葉さんのキスに抵抗もしてなかった方はお引き取り願いますんで』
「さっき不可抗力って言ってませんでしたっけ蝶さん、姐さんに強く抵抗出来ねえの知ってやがりますよね絶対」
『私、気弱な中也さんって嫌いですから。……じゃ、本当にもう戻りますね。体質は移しませんし、紅葉さんの悪戯ももう終わったんでしょう?』
「あ?何言ってんだよ、お前飯食うために来たんじゃ無かったのか
?」
「「「『えっ』」」」
全員の声が揃った瞬間だった。
え、嘘でしょ、今の流れで気付いてないのこの人?
中也さんだわ…