第14章 わからない人

「釣り合うも何も幹部以外の誰があいつの事を分かってやれると…」

「……以前の俺ならそうだったかもしれねえが、今の俺にはその理解がねえからな」

弱々しい中也さんの声。

なんで、記憶がないくせして…あんなに無茶苦茶な態度をとられて、私の事そんな風に考えられるのこの人は。

「だからとりあえずは、あいつの気持ちを尊重してえし……合意があるまで手は出さねぇ。出したくなっちまいはするが、そこだけは我慢しねえと…まずは一からやり直しだ。振られなくなるまでもがいてやるさ」

「記憶が無いからか、どうも中也らしくはないのう…蝶へのその意気込みは流石じゃが、やはり気弱になってはおらぬか？あの子が中也に手を出されて嬉しくないわけがなかろうに」

「あ、姐さん？俺が今そんな事したって、あいつは今の俺の事は「好いておらぬはずがないじゃろう」！！」

「抱きしめるなり頭を撫でてやるなり、そこまでならまだ抵抗は薄いじゃろうだ……だからこそ中也の方から行ってやらずにどうする。あれほどまでに純情な女子も珍しいものじゃが、蝶が健気過ぎて泣ける話じゃぞ」

そんな事言わなくていい。
頼んでないのに、なんでそんな事言うの。

「いや、でも俺誰ともんな事した覚えが無けりゃ慣れてるわけでも…」

「ならば試しにしてみるかえ？」

「「「えっ」」」

私も一緒にフリーズした。
え、待ってどういう事？

私がここにいるってバレてるの？
それとも…？

「は、はあ？姐さん？どういう｢ここにおる誰かとしてみればよいではないか｣無理に決まってんだろんなもん！！？」

「ならば私とすればよい…なんならこちらからしてみてもいいのだが？弱気な中也というのも可愛いもんじゃ…」

紅葉さんの声に思わずﾊﾞｯと中を見た。
ジリジリと中也さんに近寄る紅葉さん。

「待てって姐さん！！……ってまさか酔ってんな！！？おい、誰かこの人止めろ！！！」

「い、いや流石に幹部をお止めするなんて事…お、尾崎さん！？中原さんには蝶ちゃんが…」

「何、行為にまでは及ばぬ…少し大人の男にさせてやるだけじゃ」

相手が相手で中也さんも引き剥がせない様子で、遂に紅葉さんの手が中也さんの頬に添えられた。

……かのように見えた。

「＿＿＿＿おや、可愛い来客のお出ましのようじゃの？冗談じゃて、そう怒らなくともよいではないか……蝶」