• テキストサイズ

Replay

第14章 わからない人


『が、我慢とかしてないですから…ごめんなさい、もうそういうのやめてください』

「……言っておくが俺はしつけぇぞ、お前の気が変わるまで諦めてなんかやらねえからな」

『…そういうのももういい…放っといてくれたらいなくなるかもしれないから……』

「俺の隣にいろ…俺に甘えて、可愛がられてろ」

私の訴えも聞かずに私を抱きしめ続ける中也さんに、言葉ではやめてと言えるのに、拒めなかった。
離せなかった…嘘が吐けなかった。

『……今日だけでいい、から…っ、今日だけ…』

「今日だけと言わずに俺としてはいつでもこんなんでいいんだが…怖い思いでもしてきたのか?」

コクリと頷くとそうかそうかと撫でられる。
この手が好き…この手に撫でられるのが大好き。

「それは俺には話せねえ?」

『………話したくない…けど、話したい…ッ』

どうすればいい?
この人に話をしても、私の事を忘れて____待てよ。

「お前と一緒にいた時なんかの記憶は、全部お前のところだけもやがかかったように見えねえんだよ……けどそれが全部お前だってんなら、モヤになっている部分以外の周りの情報から辿ることも…」

『!………七年前、誰かを拾った記憶は?』

「顔は分からねえが、それ以外は鮮明に覚えてる…ってそうか、お前か!!!」

『……………そこで指揮を執ってた、研究者は…覚えてる……っ?』

声を震わせながら中也さんに問う。
私の時のように、あそこまで重症な記憶障害ではない。
私の顔が思い出せなくて、私との会話が分からなかっただけで、それ以外は覚えているのなら…

「指揮…つったらあのイカれた実験ばかりしてやがったあいつしかいねえだろ。なんで観てたのかは知らねえが、俺は実験の“データ”なら覚えてるぞ……研究者はや『もういい…ありがとう』!………体質って、そういう事か」

首領以外にカルマと殺せんせーがいたからか、中也さんは何かを察して遠まわしに聞いてくれた。
こういう所ではやはり察しがいいらしく、本当に実験の内容なんかは全てはっきりと覚えているそう。

『…気持ち悪いでしょ。関わらない方がいいし、懐かれるようなことしない方が中也さんの身のためだよ…折角一回こうやってリセット出来る機会があるんだから』

「そういう態度に心底腹が立つのも懐かしい……悪い、俺諦め悪い男なんだよ」

『知ってる。でも今回は諦めて』
/ 2703ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp