第14章 わからない人
「……すまん、思い出せはしねえけど…お前が好きだって事はもう素直に認める」
『?…ど、どういう事で……っ!?』
今度は向こうから、力強く引き寄せられて抱きしめられる。
…いつもの強さだ。
いつもの、中也さんだ。
「昨日見た時からそうだったが…俺自身に交際相手がいたっつうのとお前がまだ学生だったっつうので見ねえふりしてたんだが……そりゃあ気にもなるわ。元から好きだった女なんだから」
『!!……ち、中也さん…?あの、私に拘らなくてもい…ッ、?』
「拘ってるっつうか好きになっちまうもんは仕方ねえだろ?…一々許可とんのもあれだから、こんな状態で申し訳ねぇんだが……俺の恋人になってくれませんか」
『え…、え!?な、なんで今告白!!?』
唐突すぎる中也さんの告白に、私もほかの三人もポカンとして中也さんに目を向ける。
「あ?なるところからしねえと申し訳ねえだろ、一応俺の意思なんだし……お返事は?」
『!……へ、んじ…とか、そんなの………っ』
勿論ですと、はいと言いかけて、言葉が紡げずにボロボロと涙が零れてきた。
あれ、おかしいな…嬉しいのに、幸せなのに怖くて怖くてたまらない。
『………っ、出来ません…ごめん、なさい…ッ』
「蝶ちゃん!?なんでそんな…」
『首領……だ、だって私、こんな身体なんですよ!?もう私、何からどう説明すればいいか分かりませんし……中也さん、私のこと守るために記憶まで飛ばして、データも全部無くなっちゃってるし…』
「…データ?」
中也さんの声にビクリと震えて、そちらに恐る恐る目を向ける。
「お前の身体が…どうなのかは分からねえ。けど、俺の記憶が曖昧なだけで……そのせいでお前が俺に何かを遠慮する必要はねえと思うんだが」
『………私にもうあんまり優しくしないで下さい…またこんな事があったら、私耐えられませんから』
「?……っ!お前さっき、俺がお前を守るためにって…それまさか、お前の親って…保護者が俺だったんじゃねえのか!?言ってたよな!?自分のせいで怪我させて記憶も無くて…今は心配してくれる奴がいねえって!!」
どれだけこういう事には鋭いんだろう。
一言一言、腑に落ちたように中也さんは発していく。
「なんて事だ…俺が我慢させて……同じようには出来ねえかもしれねえが、せめて俺や自分に嘘ついて我慢すんのはやめねえか?」