第14章 わからない人
「森さん!!!」
「!!赤羽君…それに殺せんせー!!?どうしたんだい急に……って蝶ちゃん!!?」
『や……ッ!!!』
頭を抱えて蹲る。
知らない内に、先程まで自分のいた首領の執務室に連れてこられていたらしい。
だけどどうすればいいの?
私の事を大事に思う中也さんは今いないのに…こんな面倒な子供を宥めてくれる中也さんは、今いないのに。
振られた、見捨てられた…違う事なんて分かってる。
けど、現に今…私を受け止めてくれていたあの人はいない。
「中原君を呼ぼうかい!?こうなってしまっては、もう彼に会ってしまった方が…『やだっ、もうその名前出さないで…!!!』本当にどうしたんだ!!……っ、バラすかバラさないかだけ選びなさい!!!」
首領の声に少しだけまともに頭が機能した。
言いたい、言ってしまいたい…だけどここで言ってしまえば、きっとあの人が苦しんでしまう。
混乱させて、あの人が悪いわけじゃないのに責任感を与えてしまう。
そこまで考えることが出来たのに、今の私では中也さんと深く関わらないという当初の予定を考える事が出来なかった。
身体が…本能が、あの人を欲してたまらなかった。
髪だけなんとか真っ黒に染め上げて見せればすぐに首領は走ってそこから出てしまう。
そして何よりも驚いていたのは殺せんせー。
「こ、これは…!?」
「いいから!!……っ、もうちょっとだよ、もうちょっとで中也さんここに来てくれるから…!!」
カルマの言葉はその通りで、近くにいたのか本当にすぐにその人は連れられてここに来た。
執務室の中に、わけも分からない癖に、焦ってここまで入ってきた。
その様子を見た瞬間に…いつもみたいに私のためにと駆けつけてきてくれた中也さんにどうしようもなく安心した。
どうしようもなく愛しくなった。
「澪!!?首領に呼ばれてきてみればお前、いったい何が…っ」
『中也さん……ッ、中也さん…!!!』
「うお!!?と、とりあえず泣き止…………おう、俺はここにいんぞ。安心しろ、どこにも行かねえから」
中也さんに泣きついてギュウッとしがみつけば、それに応えるように私を包み込んで、大丈夫だと言い聞かせながら撫でてくれる。
『!!……っ、ふぇ…ッ、どこにも行かない……っ?離れて行っちゃわない!?』
「行かねえから…俺相手に怖がんな。ここにいるから」