第14章 わからない人
立原の執務室で急いで髪の色素だけ抜き取り、そのままカエデちゃんの元に移動する。
するとそこは嵐の中なのかとでも思ってしまうような風が吹き荒れる所…しかし床が木製なのを見ると、どうやらどこかの室内のようだ。
体を壁で覆っているため何ともないのだけれど、これでは視界が悪すぎて埒が明かない。
仕方が無いので私を覆う壁をそのまま周りに向けて広げていき、吹き荒れる風と時たま聞こえる銃声が止むまで外に外にと追いやっていった。
そんな中、建物の内側を全て壁でコーティングするようにして風を止めたところで、そこにいる人物が視界に映った。
建物の中…いや、違う。
建物に囲まれているだけの屋外だ、これは。
そこには殺せんせーと、渚君、不破ちゃん、寺坂君…そしてカルマとカエデちゃんが咳き込んだまま立っていた。
そして今度は、先程とは別の意味で私の身体から力が抜ける。
『!!』
建物の中じゃなかった。
それはつまり、私の予想よりも遥かに壁の面積は広かったということ。
少しだけフラッときてしまったらしい、すぐにそこから立ち上がって一瞬私に襲いかかった目眩に耐えてから、カエデちゃんの元に歩いて行く。
『か、カエデちゃん…大丈夫?どこも怪我なかった?……さっきのは?』
「!蝶ちゃん!!!本当に来てくれたの!!?…ってさっきの止めてくれたの蝶ちゃんだよね、ありがとう!!」
怪我は無いらしく、他の皆も何ともなくて…殺せんせーの皮膚が少しだけ溶け、疲弊しているようだった。
話を聞くと、対殺せんせー用物質のスモークと共に銃撃に遭ったらしく、その上シロさんの策略によってスモークが風で送られ、あまりの威力にそれが暴風となって吹き荒れていたそう。
そして、先程戦闘をしていたところを遂にシロさんに見捨てられ、心を開きかけてくれていたイトナ君がシロさんに無理矢理連れ去られていった。
『……だいたい分かった。とりあえず私も今時間が惜しいし、すぐにイトナ君の救出に向かった方がよさそうね』
再び自身を壁で覆えば、殺せんせーが一足先にとイトナ君を救出に向かってしまった。
『殺せんせーが一人で行ったって、シロさんは多分とっくに対策済みだから……!ねえ、放課後残ってた子ってこれだけじゃなかったでしょう?他の皆もどこかにいるんじゃないの?』
「!……さっすが蝶、ナイスアイディア」