第14章 わからない人
リクさんの証言によって犯人が絞られた。
それを首領に伝えれば、やはり思い当たる部分があったとのこと。
紅葉さんもそこにいて、私が話せば納得の表情を浮かべていた。
そうして確信を持って特定した犯人。
相手の位置は今分からないのだけれど、死神と一緒にいる可能性が無いわけでもない。
今すぐにその人を捕らえるために細心の注意を払って準備を始める。
装備を整えて自身を壁で覆い、異能力の効果の及ばない状態になってからその犯人の顔を思い浮かべて、ナノレベルの扉を作り出す。
向こう側が見えないために警戒する以外に情報も何も無いのだけれど、やってやる。
意を決して移動しようとした。
そんな時。
ノックの音が響いて、首領の執務室に中也さんの声が響く。
それに驚いて反応してしまって、つい集中力が切れてしまった。
『へ…ッ!?』
「失礼しま……って澪!?お前なんでんなとこで座り込んでんだ!!?」
新しく思いついた、誰にもバレない移動手段…便利さに比例するように、驚くほどの気力を要するのがこの能力。
特別気合を入れていた分、膝から力が抜けるようにその場に崩れてしまった。
『あ……な、なんでこんなタイミングで…』
「しかもなんで姐さんまで……じゃねえよ、大丈夫か!?ほら、手掴んで立ち…!」
中也さんは目を丸くして私を見る。
私が手を取ろうとしなかったからだ。
「…何してんだよ、手伝うから立『い、いです…自分で立てます』……とてもそうには見えねえんだが」
図星だった。
何せ、今から中也さんを襲った元凶を捕らえに行こうとしていたところだったのだ。
能力まで使って…見られなくてなんとかバレなかったという点で気が抜けたというのもある。
「れ、澪ちゃんはとりあえずコンディションが整うまで楽にしてくれてたらいいから!…で、中原君はどうしたの?」
突然の幹部の訪問ということで、変に間を開けても怪しまれるから中に入ってもらう他なかった。
これは恐らく、中也さんが出て行くまでは下手に動けないはず…
それまで持ちこたえれば、こ考えていた自分が甘かった。
「いや、澪が首領に呼ばれているとは聞いていたんですが流石に遅いなと思って心配で……?」
今、この瞬間に私の携帯がタイミング悪く鳴り響く。
出る許可が首領からおりて相手を見ると……
電話の主は、カエデちゃんだった。