第14章 わからない人
「わ、分かった……っ」
『分かった?何がです?』
「ッ…分か、りました……っ!!言います、言いますから命は…ソラは殺さないで下さい!!!」
リクさんの言葉にナイフを抜き、じゃあお願いしますねと笑顔になる。
『良かった、物分りのいいお方で。じゃないと私、また手が血に濡れるところでしたよ……まあ血なんか出さなくても殺れるんですけどね?』
「!!……っ、な、名前は『ストップ』!?な、何故です!?」
『名前はいらない、偽名の可能性もあるから。まずは…指揮官は、ポートマフィアの人間?』
私の問いにまた驚いて、控えめにコクリとリクさんは頷く。
『うんうん、嘘じゃないですね。あ、余談なんですけど私演技はするのも見抜くのも得意ですから……舐めた真似だけはしない方がいいですよ』
更に体を力ませたリクさんに上々だと判断し、次の質問に移る。
『その人は幹部の側近にも近い、幹部秘書だった貴方達よりも上の役職の人?』
「…はい」
『成程、じゃあ幹部の一人ってわけだ…うん、じゃあとりあえずはおしまいにしておくね。後吐いてくれたお礼に…』
「?……ッッッ!!!?……っ____」
突如、痙攣したように体を跳ねさせてから動かなくなったリクさん。
それに立原が遂に動いて、リクさんの生死を確認する。
「……っ、お前趣味悪ぃわ…焦ったじゃねえか」
『…………趣味が悪い人間には関わらない方がいいんじゃない?…窒息させて失神させるくらい仕方ないでしょ、誰に手を出したのか分かってんのかしらこの人』
「………お前は危なっかしいから放っとけねえんだよ。後安心しろ、頼まれても見捨ててやんねえし…ちょっとやり方がいきすぎてるだけのただの純粋な乙女だよお前は」
『!何それ、今度は立原が口説き文句??』
クスクス笑うも反論はされず、何故だかクシャリと頭を撫でられる。
「…よく我慢した。……よく耐えた」
カイさんを殺したなんてのは勿論ハッタリだし、ソラさんにこんな目に遭わせるつもりも毛頭ない。
リクさんを殺すだなんていうのも、厳密に言えば大嘘だ。
壁で異能力無効化空間を作り出し、それで彼女を包み込む。
カイさんとソラさんにも昨日の内に同じ作業を終えてきた。
今は二人共マフィアの監視下に置かれている。
『ッ…約束、だもん……っ』
「…偉いぞ、本当に」
殺しはもう、しないから。