第14章 わからない人
『へえ、寿命を奪われるのが怖いんですか……本当に?』
ヒヤリと辺り一帯の温度が下がった気がする。
リクさんは目を見開いて私を見、次第に怯えたように震え始めた。
冷静そうだった彼女の変化に、私についてここに来た立原も少し驚いている。
以前中也さんからすって竹林君に渡し、今日返してもらったばかりのナイフを手に持つ。
立原に預けておいた分だ。
それを持って狙いを定めて……突き刺すように振りかざし、壁に向かって突き刺した。
「ぁ……ッ」
数ミリ程か、狙い通りだ。
手っ取り早く済ませたいし、私はこの人に全く思い入れも何も無い。
少しだけ切れた首元から滴る血液が地面にポタポタと落ちる。
『そんな回りくどいやり方しなくたって、私、今ここで貴女の命を奪う許可ももらってるんですよね…天秤にかけてみても分かりません?今ここで吐かずに殺されるのと、教えて生きられる可能性がある方にかけるのとどっちがマシなのか』
ねえ、と少しナイフを首元に向けて沈ませれば、小さな悲鳴を漏らす相手。
普段なら苦手なものだとしても、今の私じゃあそんなものに興味も示せない。
怒っちゃうと、あんまりそういうのに関心なくなっちゃうから。
『ふふ、どうします?後もうちょっと……私の手が滑りでもしたら大動脈に当たって、出血多量で死んじゃいますね』
「ひっ!!?」
『いいんですか?お仲間さんみたいな死体になっちゃっても』
私の言葉にリクさんは目を更に見開かせる。
どういう事なのか理解出来ていない彼女に、私が優しく言ってあげた。
『ソラさんはまあ、操作に貢献してくれましたから残していますけど…カイさんは昨日の内に、頭にきすぎて心臓止めちゃったんですよね。首領は私を止められませんし……ああ、リクさんて私の能力知りませんでしたっけ?私の能力使えば、人の心臓の一つや二つ___』
「グッ…!!!?カ、ハ…ッッ!!!!」
『____簡単に止められますから』
言い切ったところで能力を解除する。
リクさんは体を脱力させて呼吸を整えようと必死である。
恐怖に怯えてもう何も考えられないといったような目だ。
……そう、普通の人間はこういう反応になっちゃうから。
『で?どうします?貴女が吐いてくださらないのであれば、心苦しいんですが私は今ここで貴女を殺して、次はソラさんに同じようにするしか…』