第14章 わからない人
『甘いものですか、良いですね!私よく作ってるんで、よろしければおすそ分……!!す、すみません何でもないです…』
「いやいや、おすそ分けしてくれよ是非。喜んで食うわ、料理美味そうじゃんお前」
『………ごめんなさい、愛用してた調理器具と家電が一部今使えなくて…暫く作れないんでした』
困ったように笑えば友人の家だったな、確かと返される。
勿論それもそうなのだけれど、そこは大した問題じゃない。
「なんならこの勢いでいつか飯でも作ってもらおうとか考えてたんだが」
『…ごめん、なさい』
「?……んな思い詰めんなって、冗談だ、また気が向いたらでいいから」
最近ろくな飯食ってる気がしねえからなと笑いながら言う中也さんに、酷く胸が締め付けられる。
ごめんなさい、その言葉が溢れて止まらない。
『…………ごめんなさい。じゃ、また後で戻ります…』
「あ、おい!?本当に気にしなくていいからな!?」
『は、はい!失礼しました!!』
執務室から出て、もう一度ポツリと声が零れる。
何回言っても言い足りない…何度消そうとしても消せない。
ごめんなさい。
我慢するから…せめて隣にいさせて下さい。
もうお弁当なんて作らないから…敵に毒を盛られやすいようなデザートなんて、作らないから。
ガタガタと震える手を身体で包み込むように、壁に背をあずけてズルズルと座り込む。
『ごめんなさい……ごめんなさい………ッ』
また軽率な判断で、中也さんに危険が及ぶ可能性を作ろうとした。
なんて学習しない奴。
もう絶対に、手作りの差し入れなんてしちゃいけない。
そんな事をしちゃ、いけない。
頭にひたすら言い聞かせてから、顔を上げられないまま首領の執務室………否、裏切り者を拘束している牢へと移動した。
『で、リクさん。率直に言うと、もう貴女が犯人の片割れであることともう一人の人物が指揮を執っていた事は分かっているんです。もう一人の指揮者は誰なんですか?』
「…ソラが喋りましたか?余計な事を……言えません」
『相手の異能力が怖いからですか?』
そう声を出すとピク、とリクさんが反応を見せる。
牢に移動し、質問を始めて数分。
これは、思ったよりも早くに決着がつきそうだ。
「そりゃあ、遠隔操作で寿命なんて奪われちゃたまりませんから」
…言うと思った。