第14章 わからない人
作り上げていた分の書類のデータを中也さんに提出すれば、目を見開いてこちらに顔を向けられる。
「お、お前…これ全部学校行ってる内に仕上げてきたのか!?」
『?はい、出来るだけ進めておこうと…すみません、休み時間しか使えなかったので随分…』
「いやいや、こんな量を……一週間分くれえはあったろ」
『病み上がりの幹部さんのお仕事のお手伝いしたかったので』
少ないわけじゃなかったのか、それなら良かった。
これで本当に中也さんの力になれる。
「………お前、秘書として入ってきたのになんでこんなに仕事すんだよ?人がいいにも程があんだろ」
『どちらかといえば体を動かす任務の方が好きってだけですよ。これで夜はたっぷりそっちに集中出来ますし』
「!そうか、そっちもいけんのかお前…そういや、まだ戦い方も知らなかったな。どうだ?これから訓練室でちょっと手合わせしてみねえか」
『!!…中原さんに比べれば全然大したこと無いですよ?それに私、これから少し首領と用事もありますし』
それならそれが終わってからでもいいからと粘られる。
私が仕事を終わらせてきたせいで時間も確かに余っているからか、中也さんは相当気になっている様子だ。
…どうする?
肉弾戦になんて持ち込まれてみろ、すぐに思い当たる動きが出てくるぞ。
銃撃を見せてもアウトだ、私がテンションが上がって結局自分のスタイルになってしまう。
…………やるなら一か八か、ナイフ術か。
あれなら、この人にもそこまでまともに見られたことは無かったはずだ。
『……分かりましたけど、私ナイフを使った暗殺業が主だったので、手合わせなんて一瞬で決着ついちゃうと思いますよ?』
「ナイフ?…ああ、別に構わねえぞ。俺もある程度は力を抜くし、怪我もさせねえようにするから」
一瞬、何か怪しまれたような気がした。
それもそうか、この人自身ナイフを扱う事も多いし。
刃物を帯刀していない人間の主な武器がナイフじゃあ、流石にプロからしたら違和感あるよね。
けど大丈夫、経験だけは人一倍あるんだから。
並の殺し屋なんかじゃ歯が立たないくらいには、私にだって出来るから。
『じゃあこれから少し席を外しますので……あ、珈琲切れかけてたんで補充しておきましたからね』
「あ?……!何から何まで悪いな世話んなって…珈琲見てっと無性に甘いもん食いたくなるな」