第14章 わからない人
『聞きたい?データの不備』
「き、聞きたいっす!!!」
相も変わらず何故か敬語な木村君。
まあそれならば、と意を決してその不備を指摘した。
『クラスの名簿表の、女子の名前の横にだけ書かれたカップ数………………私のやつ、間違えてるのよ』
「「「え…っ?」」」
全員の視線が刺さる中、流石に恥ずかしくなってふい、と顔を背ける。
あれは多分、私が普段付けてる下着のサイズだ。
殺せんせーくらいにもなるとそんな誤魔化し通用しないだろうし、それに本当に下着に執着があるんなら私の正確なカップ数だってちゃんと把握してるはず。
第一あのサイズでおさまってるんなら私は何も苦労することなくもうちょっと快適に過ごせてるし。
「あ、そっか。蝶って普段邪魔だとか言って自分で胸締めて潰してるから」
『ちょっと黙ろっかカルマ、私が手出す前に』
てかなんで知ってんのよ!?
ふと考えるとようやくそこに気が付いて聞けば、教えられてたと返される。
なんという情報まで…
「おい聞いたか野郎共…!!どうやら俺達の予想は随分とスケールの小せえものだったらしい!!!」
「天使蝶さん、俺達E組の希望の光……あわよくばその魅惑の包容力で俺達を癒してほしい」
『ほ、包容力…?何言ってんのかよく分かんないけど疲れてるんなら話くらい聞くよ…?』
「あーあー、ダメでしょ岡島?この子が理解出来ない下ネタぶつけんのやめなよね、誤魔化すのも面倒なんだから」
『え!?下ネタだったのさっきの!!?』
グルッと岡島君の方を向いて、段々と恥ずかしさに顔が熱くなってきた。
どうしようもなくなっていれぱ片岡ちゃんに耳を塞がれ、カエデちゃんに目元を塞がれ…それがなくなった頃には岡島君を初めとする男子数名が女の子達に寄って意識不明に。
……公然でのエッチな話ならこうなっても仕方ないよね、うん、男の子だから気持ちは分からないこともないけど。
ご愁傷さまと心の中で呟いて苦笑いを浮かべ、パソコンをしまって席を立つ。
するとそれに気がついた中村ちゃんに声をかけられる。
「蝶ちゃんもう帰るん?今日これから殺せんせーの冤罪暴きに動く感じかと思ってたんやけど」
『あー…ごめん。ちょっと忙しいからさ。何か困ったことがあったら連絡してよ、いつでも飛んでくから』
「忙しい…そういえば今日も休み時間とか忙しそうやったね」