第14章 わからない人
あれから殺せんせーの下着泥棒疑惑は少しの間話題に上がりはしなかったのだけれど、先生の私物の中から女性用の下着が大量に見つかったことから再び先生の疑惑が浮上した。
潔白を証明するために見せた職員室のデスクの中や予定していたバーベキューの串、挙句の果てには体育館倉庫のバスケットボールにまで下着が付いている始末。
どこからどう見てもやりすぎ…なのだけれど、やはりそれでも皆の疑いは深まっていくばかり。
「見て!これ…クラスの名簿表!!」
教室から持ってこられた、出欠確認用の名簿表。
そこを開けば、女子の名前の横にだけ書かれた胸のカップ数。
皆のバストカップが表記されている…のだけれど、その表記に不満のある子がただ一人。
「永遠の0って何よおおお!!!」
カエデちゃんだ。
カエデちゃんは胸に異常な執着がある様子。
そしてそんなカエデちゃんをよそに続々と見つかる疑惑の品。
「椚ヶ丘、Fカップ越えリスト!?こんなものまで…」
「ちょっ、先生本当に何も…!!」
「何もって、それじゃあこれはどう説明するの…」
「永遠の0……」
胸を押さえてぶつぶつ言うカエデちゃんからクラスの名簿表を預かって、私もそれを確認する。
が、そこで私は今回の犯人が殺せんせーではないという証拠を確かに確認した。
『……』
「ほ、本日の授業はここまで…それでは皆さん、また明日……」
放課後、明らかに落ち込んだ様子で教室から出ていく殺せんせー。
皆の雰囲気は相変わらずなものだけれど、それでも本気であの先生がそんな事をしたのだと考える子はいなかった。
と、そこで不破ちゃんが声を上げた。
「…偽よ」
「!偽??」
「そう!少年誌の探偵物でありがちな!!これはきっと、偽殺せんせーの仕業だわ!!!」
「ふ、不破さん…?確かに本気でやってるとは思えないけど……でもあんなデータまで…」
誰かの声にピクリと反応して、それに私が意義を挙げる。
『うん、多分偽で間違いないと思う。あのデータ、殺せんせーが作ったものじゃないよ…不備があったから』
私の声に皆がバッとこちらを向く。
殺せんせーが行う作業に、テンパってもいなければ不備などというものが生じるはずがない。
それを一番に知っているのは、紛れもなくこのクラスの皆だから。
「そ、その不備って……!!?」