第14章 わからない人
「し、っ…白石さん……!!」
『本当のところはどうか分かんないから何とも言えませんけど、殺せんせーがするとは思えませんけどね。する度胸も無さそう』
「先生褒められてるのか貶されてるのか分からなくなってきたんですが」
少しだけ緩和されたような雰囲気の中、話題は私の方へと移り変わる。
皆も私の様子を見て相当気にしていたんだろう。
「そ、それはそうと白石…中也さんは、大丈夫だったのか?」
『!前原君…』
先陣切ってそれを私に聞いた前原君も、どことなく聞きづらそう。
「言いにくかったらいいんだけどやっぱり俺らも心配で…特に蝶ちゃんの方が心配だったから」
『磯貝くんも…うん、大丈夫だよ。ごめんね皆にも心配かけちゃって……昨日の夜に意識が戻ったらしくて、今じゃもうぴんぴんしてるから大丈夫!今日からまたお仕事復帰するんだって前より気合い入ってたくらいだよ』
クスクスと笑いながら言うと、皆どこかホッとしたような顔つきになる。
カルマはもう知らないふりをして自分の机に座っているけれど、それ以外に気付いた人はいなさそう。
こういう時、本当に自分が嫌になる。
親しい人でも、騙そうと思えば騙せてしまう自分が本当に嫌い。
自分の事を親友と呼んでくれた子にそれを手伝わせているのはもっと嫌い。
『だからもう心配しないで!犯人の方はもう割れたし…まあ私は今日からその影響でちょっとお仕事増えちゃったけど、気にせず過ごしてくれてたらいいよ』
カルマの隣の自分の席に座り、持ってきていたパソコンを立ち上げて持ち出して出来る範囲の仕事を片付け始める。
本来秘書なんかがするようなものではないのだけれど、私は元々は幹部職の人間だから。
中也さんがちょっとでも何かあった時にそっちに反応できるように…ちょっとでもあの人の力になれるように。
「仕事って…じゃああんまりそれ覗かない方がいいのかな?」
倉橋ちゃんの声に少し眉の端を下げてから、ごめんねと声にする。
『一番後ろの席でまだ良かった…中々内容も内容だから、見せていいやつでもあんま見ない方がいいと思う』
「…そっか。手伝えないのがもどかしいけど無理しないでね?また何か甘いものでも食べに行こうよ!」
『!うん、行く!!』
甘いものにつられて返事をした。
だけど多分、私がこれに応じられる時は近い内には一切無い。