第14章 わからない人
『ごめんカルマ、ちょっと遅れた!』
「ううん、ていうか寧ろありがとうっていうくらい俺の方がお世話になってる気がする」
『い、いやこれはもう習慣っていうか…せ、折角だからと思って』
「うん、ほんとにありがとう。だからとりあえずさ……俺いるんだから木渡りフリーランニングやめない?」
トレーニングトレーニング、と笑いながら校舎に向かう。
カルマはどこか浮かない様子だけれど、授業でも取り入れられたフリーランニングを応用し、見事にこちらにも慣れていていた。
私が知らないうちに結構練習してるな、これは。
『結構やっぱり訛ってるなぁ、最近出来てなかったから』
「訛ってるって言っても俺がついていけるくらいにペース落としてるくせしてよく言うよ、中也さんとやってた時なんか目視すら……ってごめん」
『いいよ、もう気にしてない。学校来たらカルマもいるし、夜は中也さんのとこでお仕事手伝えるし…これでいいんだよ』
「……あんま無理だけしないでよ?」
分かってます、と返してそれと一緒に校舎の手前まで飛んで着地する。
チラ、とカルマの方を見ると引き攣り笑いで返される。
「敵わないなぁほんと…どうやったらこんなとこからそこまで脚力だけで飛べるわけ?」
『トレーニング?』
「脳筋移ってんじゃないのれ…蝶」
『はいそこ、名前間違えない』
ごめんごめんとこちらに来るカルマ。
合流してから校舎に入り、教室に入る。
そして皆に挨拶を…と思ったところで、思いもしなかった事態に直面する。
『おは……何?この状況?』
「あ、蝶ちゃん!おはよう…」
カエデちゃんの控えめな挨拶にしっかりと返してから、クラス全員の険悪な雰囲気に取り囲まれた殺せんせーに目を向ける。
『こ、殺せんせー?いったい何があったんです?これ』
タジタジしている殺せんせーの代わりに、周りの子が説明を始める。
事の発端は一冊の雑誌。
そこの表紙にでかでかと取り上げられているスクープが…
『……下着泥棒…黄色い図体に、ヌルフフフという奇妙な声…ああ、成程。それで日頃から煩悩満載の殺せんせーが疑われてるのね』
「日頃の行いって大事だもんねぇ…蝶はどう思う?」
『ん〜?私はね………殺せんせーでだけはないと思うけど』
私の声に一斉にこちらに視線が刺さる。
『殺せんせーは下着くらい気付かれずに盗めるでしょ?』