第13章 愛ゆえに
「あ?いつも?」
『すみません、私も癖で。よく歳のせいで色んな人に甘やかされるんでつい…私は中原さんの部下なんですから、幹部が作業されている横で座っておけるわけがないでしょう?』
咄嗟に焦るのを隠して言い切った。
危なかった、身体に染み付いた癖とはこんなにもボロが出てしまうものなのか。
「役職だけ取り上げんじゃねえっての、役職だけ。俺は別に幹部だとかそういうのは気にしねえ質だから…それに、折角こうやって会えたんだ。甘えられるもんには甘えとくもんだぞ?無理に大人になろうとなんざしなくてもいいんだからよ」
『……じゃあ、本当に何かあった時だけお願いしますね。私はこれから椚ヶ丘の方で夕方まで進めますので、また後で戻ります』
「そういうんじゃなくてだな…まあいい。あんまり無理して身体壊さねえようにな、学校行けてるんならそっちを優先した方がいいぞ学生のうちは」
『!…ありがとう、ございます』
では、と会釈をしてからその場から逃げるように立ち去って、エレベーターで下の階に降りてから走って立原の執務室に移動する。
なんなのあの人、久しぶりだこの感覚。
バタンと音を立てて中に入れば中にいた立原に驚かれ、しかしそれを気にすることもなく髪の毛から黒色の色素を抜き取った。
肩で息を整えているうちに立原が私の方に寄ってくる。
「ど、どうした…?れ……じゃねえ、蝶?」
『………あの人の頭が理解出来ない…なんなのあの人、本当に分からない』
「ま、まさかまた何か怖い目にでも遭わされたか!!?でも中原さんが部下にそんな事は…『逆』逆……?」
『…初対面の相手に……しかもこんな子供に対して?なんであそこまで人のことを考えられるのかが分からない』
本当に久しぶり。
何を考えているのかが全くもって理解出来ない。
『なんで私に優しくするの…?』
「……一目惚れでもさせちまったんじゃねえの」
『!!…冗談やめてよね立原?……中也さんが?するわけないでしょ、こんな子供みたいな奴相手に』
「可能性はあるとは思うがな…まあいい、今から椚ヶ丘行くんだろ?……仕方ねえからお前の言った通りにしててやるよ、行ってこい」
今日から立原は、もう学校に着いては来ない。
『…うん、ありがとう。私もなにかあったら立原連れていくから』
「約束な」
『ん、約束』
中也さんは私が護るから