第13章 愛ゆえに
「甘やかすなって…お前まだ中学生だろ?仕事の腕なんかは別にしても、普段から厳しくしてやる必要は『厳しくしていただいた方がマシですから。…着きました』マシってお前っ」
『…私は外で待機しておきますね。血液の処理や証拠の回収などは全て首領の支持で回収班が終えてますので、後は机の上に纏めてある分の書類を』
何も言い返されないよう全て言い切ってから扉の前で待機する。
流石に相手からしてみれば部下や子供といえども初対面の相手…それ以上深くは追及されなかった。
昨日、中也さんと話を盛り上げてしまったのがいけなかったのかもしれない。
私は多分、この人の中で大きな存在になってしまわない方がいい。
さっきの行動が、私にハッキリとそれを示した。
多分、身体が覚えてるんだ。
だって私も、忘れていた時に抱きしめられて嫌じゃなかったから。
安心したから。
それに、自分が死んでしまうかもしれないって時に必死になって相手の手に渡るのを防いだあのパソコン……中身を私は、立原から聞いてしまった。
「おお、元ん戻ってる…相変わらずすげえな。血痕の一つも残ってねぇ」
私のせいも同然だ。
あんなものが無ければ…そもそも私がこの人と関わりを持っていなければ。
私のデータの流出を…私を護るためにこんなに無茶して。
実験データをまだ持っていたなんて知らなかった。
教えてなんてくれなかった。
私が聞いたら怖がっちゃうから、思い出したらいけないから。
いつだって私は“餓鬼”のままで、“大人”な中也さんに護られてた。
大事な部分は、知らない間に護られてた。
これからは自分が大人にならなければならない。
心に決めていたように、何があってもこの人の事を大事にするんだ。
だから深くは関わらない。
相手の中で大きくならない。
大好きだから、好きになってもらわない。
釣れない奴でも子供らしくなくてもいい。
中也さんが唯一本気で嫌いだと言い続けてた、“妙に大人じみた”私を演じればいい。
ううん、名前の通り、澪に戻ってしまえばいい。
思い出せ、忘れようとしてた日のことを。
思い起こせ、中也さんに出逢う以前の私自身を。
「にしても、妙に纏められてたな…なんていうか気が利きすぎて楽に……!澪、本当に外で待ってたのか?座っててもよかったってのに」
『!……だから、子供扱いしないでって…いつも………』