第13章 愛ゆえに
翌日、朝になってから私の仕事が始まる。
中也さんの寝ている夜中のうちは、言っても蝶の時間だった。
一日だけ様子を見ようということで首領が上手く中也さんを医務室にいさせてくれているためその内に荷物の移動を全て終えた。
一部、私の買ったワインセラーなどは迷いもしたものの、あれが無くては流石に困るだろうという判断で置いてきたのだけれど…
出来るだけ、あの人の脳に負担をかけないようにしたかった。
だから、部屋も私が行く以前のような配置を薄ら思い出しながら埋めて…私がいなかったらこうなっていたんだろうなという中也さんの家がそこに出来て。
一人で行なった引越し作業は、段々と私を現実に引き戻していった。
そして色々あったけれどもなんとか迎えた朝。
『おはようございます中原さん!お体の具合はどうですか!』
「うお!?澪か…お陰様でこの通り、元気さ」
医務室のベッドから降りる中也さんは本当に何ともないのだろう。
突然顔を出した私に驚きつつも答えてくれた。
『それなら良かった…今日はとりあえず執務室の中をまた使えるようにしようということなんですが、流石に中原さん本人じゃないと分からないものが多くて……私が見るのもいけないでしょうし』
「ああ、それは確かに見づれぇな。そこまで気にしてもらって悪ぃ………つうかお前よ、中原さんとかって中学生の割にかなり丁寧だな?」
『職業柄こういうこともありますって。幹部さんに下手なことして殺されちゃったらたまりませんから』
まあ今はいい人だって分かってるんで安心ですけどね、と笑えば昨日のことを思い出してか、中也さんの評定が笑顔なまま引き攣った。
「いい性格してやがるこいつ…頭も悪くねえだろうしどこぞの青鯖そっくりだ」
『青鯖??』
「……こっちの話だ。お前もまだ子供なんだし、俺の事は中也とでも呼べばいいのに。餓鬼の特権だぞ」
『餓鬼じゃなくって大……餓鬼じゃないですし。ていうか私が中原さんにそんな呼び方できるわけがないでしょう?』
少しむくれてそう言えば、目を丸くしてからぽん、と頭に手を置かれる。
それにビクリと肩を跳ねさせてから、目を見開いて中也さんを見た。
『え…っと?……な、んで…』
「え?…!あ、ああ悪い!!なんかいつもの癖で……って癖?何言ってんだ俺!?」
『………あんまり私の事は甘やかさないで下さいね』