第13章 愛ゆえに
「…本気かい?」
『本気です。敵の尻尾はもう掴みましたし、後は時間の問題ですから……その代わり、働かせてください。私が中也さんを絶対に護り通します』
「「!!」」
「………分かった。君が言うならもうそれに従おう」
首領の返事に立原は反論する。
カルマ君も反論しそうになっている。
「ダメだ…今回の件、私がこの子の言葉にちゃんと従っていれば、恐らくこんな事にはなっていなかった。私には止める権利が無いのだよ…中原君の執務室の隣の物置を開けよう」
『首領のせいじゃないですから…ありがとうございます』
「い、いやいや首領!!それでもそんな…っ、こいつを本気でここで働かせるつもりなんですか!!?学校はどうするんです!!?」
『学校も行く。行きながら仕事する…相手は私が捕まえる』
漏れ出した殺気にその場がシン、となる。
しかしそれでも、立原は私に言い返した。
「百歩譲って働くまではいいとしても、お前…殺すなよ……それだけはするなよ」
『…しなくて済むとでも思ってるの?』
「!…っ、いいからそこにだけは手ぇ出すな!!分かってんだろ!?んな事したら折角離れられたものが無駄になるって事くらい!!!」
あの人が私のためにとしてきた事が、無意味になっちゃうことくらい。
そんな事分かってる。
私が一番、よく知ってる。
でも、仕方ないじゃない。
しょうがないじゃない。
『…悔しいよ…っ、犯人だってもうほとんど分かってるのにさ…?なんで中也さんだけなの?なんでよりにもよって、私じゃなくって中也さんなの…ッ?殺したいだけじゃ足りない…そんな生易しいものじゃ足りないの……ねえ立原…ッ、ダメ?殺しちゃ、ダメ…?』
「っ、…ダメだ」
『お願い…抑えてても抑えきれないの。自分の手で……』
「お前だけは絶対にダメだ!!!…殺してぇんなら俺を連れていけ。お前にだけは殺させねえ」
私の手を取って、これだけは絶対に汚させねえ、と悲痛な顔で私を見る。
優しさが痛い…悔しい、悔しいにも程がある。
中也さんとの約束が、私の枷になってしまう時が来るだなんて。
ああ、本当だ。
私の事を忘れちゃったら、また恋人になるところからやり直しじゃあないか…だけどもう、あんな幸せ来ないんだろうな。
どこかで悟った自分がいた。
『……来てくれる?約束…?』
「!……ああ、約束だ…ッ」
