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第13章 愛ゆえに


首領と一緒に医務室を出る。
立原も来てと言えば素直に来てくれ、カルマ君に施した迷彩を解除してカルマ君にもついてきてもらう。

そういう事か、と首領も立原も驚いていたものの、カルマ君を咎めるような様子は見受けられない。
寧ろありがとうと言うように肩に腕を回して、そのまま一緒に首領の執務室へと歩いていった。

『…首領、これは私が勝手に来ただけで、カルマ君は私を心配してついてきてくれただけなんです』

「ああ、分かってる。…隠そうとしていて悪かった……君にだけは伝わらないようにしなければと焦っていた」

『…大丈夫です。おかげでいくらかやりやすくなったくらいですよ』

「?それはどういう…」

ニコリと笑って、私これから中也さんの秘書なんで♪と言い切れば、三人が揃ってあ、と口にした。

「ち、ちち蝶ちゃん君ねえ!?アドリブにしてもあれは流石に『蝶?』れ、れいちゃん…!?」

「れい…れいってなんか……!蝶、お前それ『澪』…分かった、聞かねえよ」

『ありがと立原。…で、話進めましょ?中也さんは私以外に誰かの事を忘れていたりはするんですか?』

「!…それが、君以外の人間の事は驚く程に細かく全員覚えているんだよ。赤羽君の事も覚えていれば探偵社やマーク君の事も覚えていた」

成程、私と同じような忘れ方かと思いきや、どうやらそこまで深刻なわけではなかったらしい。

「もやがかかったようになる断片的な記憶があるらしいけれど…恐らくそこに君がいる」

『……首領…それとカルマ君にお願いが』

私の声になんだと不思議そうな顔をして、こちらに目を向ける二人。
多分、もう元気になってる中也さんが今日医務室にいるのは首領の指示だ。

頭を混乱させてしまわないように。

『私の事は、徹底的に中也さんには思い出させないようにしたいんです。部屋の荷物も全部…使えそうなら探偵社の社員寮にでも移したい。それで、中也さんとの同居常態を無しにして「ちょっと待てお前!?それじゃあお前が…っ」…それで、カルマ君の家にお邪魔させてもらってもいいですか?』

「お、俺はいいけど…普通さ、ちょっとでも思い出してもらえるようにとか……ゆっくり思い出してもらえるようにしていくところじゃないの、そこ」

『…カルマ君は知らなかったかもだけど、私夏休みに記憶障害起こしてるの。忘れた側の気持ちはよく分かるから』
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