第13章 愛ゆえに
「なっ!?てめえなんでんな事『黙って立原、煩い』んな…ッ、こんな時まで可愛げねえなお前は本当に……!!」
「白石澪か…白石って呼ぶのはなんか違和感あるな。澪でいいか?」
『!!……はい!』
「つか立原とは随分と親しげだな?歳も近そうだしそのせいか?」
「「『は…っ?』」」
こればかりは全員が口を揃えて間抜けな声を口にした。
えっ、私が立原と歳が近そう?
どこをどう見ればそんな風な考えに行き着くのこの人?
『わ、私一応まだ十四…なんですけど』
「はあ!?十四!!?…いや、悪い。そうか、まだ十四か……いや、さっきも言ったけど綺麗な奴だと思ってよ」
『……もう。そういうの、世間じゃ口説いてるって言うんですよ?分かってます?』
「口説っ!!?す、すまねえ配慮が行き届いてなくて!!」
でも、と言いながら中也さんは、下ろした私の長い髪を手に掬う。
さっき強くされたせいでまだ怖がっているのか、そんな事にまた体を硬直させた。
「…綺麗な“黒髪”だ」
『……そ、うですか』
ちょっとだけ、胸の中にポッカリと穴が空いたような気分になった。
もしかしたら、なんて期待した。
ああそうだ、私に罰が当たったんだ…中也さんの事を忘れた私に、罰が当たってしまったんだ。
カルマ君の家で、髪を傷めないよう能力を駆使して黒く染めた長い髪。
少しの明かりでもあれば暗い中でも目立ってしまう私の髪色を誤魔化すために思いつきでやってきただけだった。
けれど、もしかしたら染めてきていて正解だったのかもしれない。
中也さんの目が、愛しいものを見るような眼差しに変わっているから。
これも知ってる…全部分かってる。
……この人、本当は黒髪が好きなんじゃないの。
そう思ってしまう程に見つめられて、なんだかもう色々とどうでもよくなってきた。
そんな時。
「でも手め…お前になら、これよりもっと明るい色なんかでも似合いそうだ」
「「「!!!」」」
『…………だから口説いてますって、それ』
「な!?そ、それは違ぇからな!?どの面下げて俺みてぇな恩知らずが…『自分の事、下に見ないでくださいよ幹部さん?』…あ、ああ…悪い」
初めて知った。
初めて、分かった。
『とりあえず私、まだ首領と手続きとかあるんで行きますね?』
「!そ、そうだったね、行こうか」
___忘れられた側の寂しさが
