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第13章 愛ゆえに


ここで私はまた、なんともわがままな発想に行き着いた。

『…首領、ソラさんは?』

「か、彼女にはもう任をおりてもらって…今は監視下に置いている」

『そうですか…じゃ、大丈夫そうですね』

私の言葉に目を丸くする周りを気にせず、中也さんに向けて微笑んだ。

『私は今日から配属される、中原さんの新しい秘書なんですよ。前任の方が予定よりも早くに解任されてしまって、首領から連絡をいただいて…先に挨拶をしようと執務室に立ち寄ってみれば部屋が開いていたものですから』

「!!…そ、そう。彼女がたまたまそれで君が倒れているのを見つけてくれて…それに、君に血液を提供してくれたマーク君を連れてきてくれたのも彼女だ。組合の方との関係を穏やかにしてくれてもいる」

「またそうやって俺に事前に知らせずに連れてくるから!!ああもう、本当にすまなかった!!!俺は手前がいなけりゃ死んじまってたかもしれねえってのに…っ」

何かお詫びがしたいとしきりに言われ続け、そんな事をさせたくはないと思うのだけれど私はこの人の性格をよく知っている。

『………じゃあ、ちょっとだけ頭に来たんで、一つだけ』

「あ、頭に来てたのかよやっぱ……な、なんでも言ってくれ。なんなら今すぐ手前の目の前で土下座でもなんでも『それ』それ…?」

『その“手前”って呼び方嫌いなんで、それだけやめて下さい……それだけでいいですから』

間抜けな顔になって私を見つめる中也さんに微笑んだまま、見つめ返した。

何か思い当たる節でもあったのだろうか。

『?どうされました?』

「…いや…手前、俺と会ったことあるか?」

『会ったことがある人に攻撃されるんです?あとほら、手前って直してください。そういう強い言葉は好きじゃありませんので』

「た、確かにそうだな…手め……あ、貴女?は変だろ、呼んでる俺も鳥肌立つわこれは…せめて名前だけでも教えてくれねえか?悪い、本当に首領からは何も伝えられてなかったんだよ俺」

名前…どうしよう。
言っちゃっていい?

言いたい衝動に駆られた…だけど素直に言えなかった。

“記憶が無い中で”知ってるような人の名前って、それだけでも苦しくなってしまうものだって私が一番よく知ってるから。

『そ、ですね……白石…白石“澪”です。よろしくお願いします、中原幹部』

それでも寂しいんだもん。
許して下さい…
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