第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『え、烏間先生…まだ私何も』
「君を見ていれば分かるさ、と言い切りたかったところだが、森さんからも心配されていたからな。昨日新幹線で話を聞かされていて、誰かの為に自分を傷付ける子だからと説明された。まさかこういう事だったとは思ってもいなかったが」
昨日の新幹線…私が寝ている時を見計らったのか。
『で、でも本当に誰かが死にそうになったらどうするんですか?私に移せば治るんですよ?』
「それで白石さんにもしもの事があったら、俺はいたたまれない気持ちになる」
『せんせ…もしもの事って、そんな大袈裟な』
「大袈裟な事なんてない。言っただろう、君だって俺の大事な生徒なんだと」
大袈裟な事だ。
少なくとも、相手がこの私なのだから。
これは決して自惚れでもなんでもない。
確かに傷と共に同じダメージを受けることにはなるのだが、私ほど様々な痛みに耐えてきている人は、恐らくこの世界にいない。
『…では一番言いたかった話に入らせてもらいますが、私は小さい頃に、人体実験を受けています。様々な方法で私のこの特異な体を弄られ、傷付けられ、死にかけた事だって数え切れないほどにあります』
そこまで打ち明けると、烏間先生は流石に予想していなかったらしい。
開いた口が塞がらないといった言葉を表したような表情になっている。
『世界中探しても、私を苦しめる事が出来る人間なんて、裏社会を含めてもほぼいません……その時の、その科学者を除いては。実験施設から逃れてポートマフィアで過ごしていた時、私はまたその科学者に捕まっています。そしてまた運良く逃れる事が出来て、つい最近武装探偵社に入社したんです。』
烏間先生ならきっと、言いたい事、分かってくれる。
『私は、存在しているだけでも厄介事を引き連れて来る人間なんです。その科学者がまだ生きているのなら、私の元に現れる可能性が高いんです』
あの男が私の能力を封じる術を持ち合わせているという事も伝える。
『その科学者以外にも、私はただでさえ武装探偵社員ですから、暗殺者以外にも敵がここに来るようなことがあるかもしれません。もし、何かがあった時…私は、自分が持てる全ての力を使って、E組の皆を守ります。助けます。』
「なら、皆に何かが起こらないよう…君が傷つかずに済むように、何か感じたらその度俺に聞かせてくれればいい。勿論怪我の肩代わりは禁止だ」