第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
そろそろ山を登り終えて皆が来そうな気配がしたので、烏間先生にお願いして職員室で話をさせてもらうことにした。
ホームルームが始まる事も気にはなるが、先に話しておいて損は無いだろう。
私が、この人の言うところの人間性を見て判断した、信頼出来る人柄と強さを持つ人なのだから。
『じゃあ、まず一つ。私の扱う空間操作の能力は、武装探偵社やポートマフィアの人間の扱う異能力とは、全くの別物です』
「異能力…ではなかったのか?では君は一体、」
『それは今からお話します。私の空間操作能力は、私が生まれつき持っている力の一つなんです。』
「生まれつき?」
『はい。正確に言えば、色々なものを媒体し、媒体させ、傷や原子レベルの物質に至るまでのものを、何かに移し替える事が出来るんです。』
説明も理解も難しいこの能力。
一見するとただのテレポートのようにも見えるのだが、それでは人の怪我を自分に移し替えることは出来ない。
色々なものをと言いはしたが、怪我なんてものに至っては存在そのものと言ってしまっても過言ではないのかもしれない。
現に、私は人の記憶を弄ったり、精神介入をする事だって出来るのだから。
まあそれに関して言えば、私自身も嫌な気分になるし、使う機会だって普通はない上、中也さんにもそれで怒られた事があった為、絶対にもう使いはしないのだが。
「…スケールの大きさを考えてみてもキリがないな、とりあえずは空間操作として認識するのがやはり楽だ。……で、君はそれが能力の一つだと言ったか?」
『はい。その空間操作というものは、私の体力や使い方、発想次第でいくらでも応用の利くものですが、もう一つの方が自分では制御が出来なくて…ちょっと見ててもらってもいいですか?あまり気分のいいものじゃないとは思いますが』
カルマ君に見せた時と同様にして、職員室に置いてあったカッターナイフを手に取り、腕を切りつける。
「白石さん、何をっ!?」
『大丈夫です…血は出てますが、見てください。これが私が生まれつき持っている二つ目の能力です』
「……綺麗に治るものなんだな。」
『はい、この通り……一つ目に説明したものと掛け合わせて使う事で、例えば暗殺者に瀕死の重体を誰かが負わされても、助ける事が出来るんです』
「それは凄いな……だが」
「その能力で誰かの怪我を肩代わりする事は禁止する」