第13章 愛ゆえに
肩で息をしながら上体を起こせば、すぐ目の前に一瞬で中也さんが現れる。
そして少々強めに肩を掴まれて、フードを思いっきり外された。
『…ッ』
この様子だと体の方に問題はなさそうだし、いつもみたいに動いてるから問題は無さそう…
なんでこんなに怒ってるのかは分からないけれど、もしかしたら中也さんは私をここに来させたくなかったのかもしれない。
どうしてここにいるのか、それを怒られるんじゃないだろうか。
それならちゃんと謝ろう、それからちゃんと私の意思を伝えよう。
そう思った。
そう、思っていた。
「……手前、女か」
『!!!…え…っ、きゃッ……!!?』
「よぉく面見せろ…」
前髪を強引に引っ張られ、顔が中也さんに顕になる。
だけど頭の中はぐちゃぐちゃだ。
どういう事?
確かにここに着くまで出来るだけバレないようにって、出来る限りの手を打っては来た。
だけど、こんな薄明かりのついた医務室で…いくら印象が変わっているっていったってこれはおかしい。
「……手前、どうやってここまで侵入しやがった。外に見張りもいたはずだ、それにここの部下じゃねえな」
とりあえず首領に報告する、と言われて髪から手が離された。
首領に連絡?そんな事されたら私が巻き込んできたカルマ君が何をされるか分からない。
『や、めて…ッ、私一人で無理矢理連れて来ただけだからっ、首領には連絡しな……ッぁ、っ…な、んで……ッ?』
目を細めて、目の前ギリギリに突き立てられたナイフ。
「騒ぐな、何言ってんのか知らねえが…それ以上抵抗するってんならその綺麗な顔を二度と拝めねえようにだってしてやれんだぞ」
これもおかしい。
なんで?
私に切り傷なんて…作ったところで意味は無いのに。
放心したまま動けないでいれば、バタバタと足音を立てて首領と黒服さん達が入ってきた。
「何事だ!?侵入者って…外で広津さん達が動けなくされ……ッ!!?な…っ」
「!首領、今捕らえて大人しくさせているところです。女でしたからとりあえずまだ傷は付けていませんが、俺の異能が解除されたみてぇで…」
「何をしているんだ中原君!!?今すぐその子から手を離しなさい!!!」
「は……っ?仰られてる意味が「いいから今すぐ解放するんだ!!」…」
涙なんて出てこない。
ただ、首領が私を来させたくなかった理由が分かった気がした。
